エリーゼは、そのポテンシャルの高さから、現代版「スーパーセブン」といっても過言ではない。ローバー製Kシリーズという非力なエンジンを、軽量なボディーにより、ロータス社の名に恥じないハンドリングを実現している。
WITH MEとELISEの出会いは、そんなエリーゼをさらに速くできないかと願っているオーナーの出現がきっかけであった。スーパーセブン(ケーターハム)→ヨーロッパ(バンクス・47R)→エリーゼとライトウェイトスポーツを乗り継いできた染野政治氏である。
染野氏は、二輪で筑波のプロダクションレースに参戦という経歴の持ち主なのだが、その染野氏がなぜエリーゼを選んだのか?彼が4輪に興味を持ち始め、最初に購入したのはケーターハム・スーパーセブンで、FORD・コスワースBDRエンジンを搭載したものだった。彼はこのライトウェイトスポーツの魅力に取りつかれ、青春を謳歌したサーキットに通うようになるのだ。しかし、このスーパーセブンでも彼の奥さんの欲求を満たすことはできずに、ロータス・ヨーロッパのコンペティションスポーツ=タイプナンバー47のレプリカ、バンクスの47Rを購入してしまう。この47Rは奥さんの評判こそそこそこであったのだが、事もあろうに染野氏はこの47Rを公道で大破させてしまうのである。当の本人は軽いムチ打ちだけで済んだというから、これも不幸中の幸いなのだろうが、染野氏の落胆振りは手に取るように分かる。結果的に47Rは廃車となるのだが、さて、次はどうしよう…。しばらく悩んだ挙句、彼はロータス社の最新モデル、エリーゼを選んだのだった。故障の多いクラシックカー以外で、彼のライトウェイト魂を満たせる車は、必然的にエリーゼしかなかったのだ。彼がエリーゼを購入した当時、すでにトロフィオも存在していたのだが、マシンをイジっていく楽しみも染野氏の中にはあり、あえて118psのSTDモデルをチョイスしたという。そしてここから染野氏の「最速エリーゼ」への道がスタートしたのである。
エリーゼオーナー共通の悩みといえば、まずはアンダーパワーなエンジンだろう。表示馬力から察するほど遅い車ではないが、少なくともドライバーが陶酔できるようなエンジンフィールでないことは確かだ。ローバー製Kシリーズは、もともと乗用車用に開発されたパワーユニットであり、ロータス社は何よりも軽さを重視して選択したといわれている。当初、1.4リットルだった排気量を、ストロークを伸ばすことで1.8リットルに引き上げていることから、これだけでも高回転型でないことは想像に難くない。
そこで染野氏はレース時代の旧友、Mr. WITH MEこと丸山浩に相談することにしたのである。
これが、WITH MEとエリーゼの運命的な出会いであり、ここから染野氏そしてWITH MEの「エリーゼ最速計画」は第一歩を踏み出したのである。そして彼らは昔話も早々にきりあげ、さっそく第一段階としてマフラー製作に取りかかったのである。
第1話 「WITH ME と ELISE の出会い」