HONDA CB900F WITH ME 1100Final F
1980年代登場のCB900Fを10年後の1990年代にバイカーズステーション誌にて、連載チューニング。
 コンセプトはHONDAが、CB1100FD以降もCBの販売を続けていたら…をテーマにHONDA純正パーツを多用し、国内外に向けて販売されたCB750F、CB900F、CB1100F、CB110Rのエンジンパーツ、キャブレターパーツ、そして車体構成に至るまで、当時のホンダCB開発者に敬意を示しつつ、技術的メリットとなる各HONDA純正CBパーツを多用し、CB1100Fの最終形態として「Final」のネーミングが与えられた。
 さらに30年が経った2021年より、当時の丸山氏の思い通りレストア作業を始め記録を残しつつ、テスト費用とパーツ&加工費用を算出し。フレームからタンク、サスペンション至るまでレストア作業の見直しも行い、完成形態まで、今後約10年をかけたことを想定し、そのときの販売価格として今回車輌価格を掲示させている。また、この車両、販売としているが、今後丸山と共にテスト&セッティングを繰り返しながら、後生に残してくれる人に譲るという意味でのことであり、価値を見いだせる人でないと譲れないという観点から、この金額を表記させている。
丸山のキャブセッティングとハンドリング製作技術を後生に残してい行きたいと思っていただける方、もしくはSHOPと共に創り上げていきたいとおもいます。

支払総額 2320 万円(税込)
車体本体価格 2300 万円
ベースCB900FB
全長×全幅×全高2195×850×1145mm
ホイールベース1515mm
最低地上高150mm
シート高815mm
車両重量(乾燥)242kg
エンジン形式空冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
圧縮比8.8
最高出力89HP/9000rpm
最大トルク7.8kgf・m/7500rpm
燃料タンク容量20L
変速機形式5速リターン
キャスター角27゜ 30'
トレール量110mm
タイヤサイズ(前・後)3.50V19・4.25V18
ブレーキ形式(前・後)Φ276mmダブルディスク・Φ296mmシングルディスク
車両重量(乾燥)232kg
エンジン形式空冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
排気量1123. 7cc
ボア×ストローク72×69.0mm
圧縮比10.4:1
最高出力100.3ps/9000rpm
キャスター角26° 0'
概要
1996年から1997年に向け、オートバイ雑誌「バイカーズステーション」誌にて、1年間連続のHONDA CB-Fチューニングカスタム連載がおこなわれた。当時、チューニングSHOPが技術を争う筑波サーキットでおこなわれていたテイスト・オブ・フリーランスレースにおいて、CB1000SFを自らチューニング、以後三年間の表彰台を独占。エンジンチューナーとして、さらにはオートバイのシャーシ、ハンドリングセッティング技術で、日本のトップチューナーとして活躍した丸山氏率いるWITH ME Professional Racingが手がけた車輌となる。コンセプトはHONDAが、CB1100FD以降もCBの販売を続けていたら…をテーマにHONDA純正パーツを多用し、国内外に向けて販売されたCB750F、CB900F、CB1100F、CB110Rのエンジンパーツ、キャブレターパーツ、そして車体構成に至るまで、当時のホンダCB開発者に敬意を示しつつ、技術的メリットとなる各HONDA純正CBパーツを多用し、CB1100Fの最終形態として「Final」のネーミングが与えられた。

足まわり編、そのパート2ついに完成したファイナルエフ


1997年2月 誌面より抜粋

今月は選択したパーツを組み込んでのセッティング出しだ実際に走らなければわからない部分が多い足まわりだがそこは自称‘‘最高のハンドリングテスター”によって

完成まで着実かつ迅速に作業が進められていった

今回は、実際にファイナルエフで、街乗りや峠、高速道路などを走りながらセットアップする過程をお伝えしよう。前号て、”本番の気合バトルをこなさなけれは、足まわりは決まらない”と書いたか、これはレースシーンだけでなく、ストリートでも同じこと。無論”全開走行で攻めろ!” と言っているのではなく、街乗りの渋滞を走ってサスの硬さやスリ抜け時のハンドル操作に問題はないか、高速走行で200kmぐらいの距離を飛ばして走っても疲れないか、その際の安定性はあるか、峠を自分のペースで軽快に攻められるか等々、とにかくふだんの使用状況で徹底的に走り込むことが最も重要なテスト方法であるということた。

■基本姿勢の決定
基本姿勢はスタンダード車両で各部の寸法を取ることから始める。その際には、単にショックの全長やストローク量を測るだけでなく、実際に人が乗ったときの乗車1Gやさまざまな状況下で実走行したときのストローク量を把握しておく。これらの数値からベースとなる姿勢を仮決めし、実走によって煮詰めていく。ただ、エンジンであれはシャシーダイナモてある程度数字が出るかもしれないが、オートバイのハンドリンクはそうはいかない。いくら横から見た車体の姿勢が同じでも、バネレートが変わったことによるコーナリング時のサスの沈み込み量の違い、タイヤのサイズ変更や異なるラウンド形状、さらには乗り手によってもバンクさせたときの姿勢変化が同じてはないからだ。そこで、ファイナルエフでは隠し味まで測定することのできる超高級ハンドリングテスター”丸山浩”が打ち出した結果から、以下の順で作業を進めた。①まずはSTD的な狙いて、車高かほほ標準に近い基本姿勢の状態から始めた。走りは標準的なものたったが、旋回性については、やはり”曲からない”という感しが強かった(STDのCB-Fがそれほと旋回性のいい機種ではないのて、これはしかたないだろう)。②そのためフロントフォークの突き出し量を10mm減らし、リアの車高も10mm上けてみた。またがると地面に足が眉かなくなるほどシート高か上がってしまったが、旋回性はよくバンク角もかなりある。ただ、高くなりすぎた重心が80km/h以上でのハンドリングに影響を与え、切り返しに重さか出てしまった。③次にリアの車高のみを元に戻し、フロント上かりの状態にする。この場合Uターンなどの小回りはとてもしやすく、軽決感はあるものの直進時の安定性か悪く、峠で倒し込みが軽い半面、深く寝たところでの旋回性と安定性が良好とはいえず、面白みに欠ける。④そこて突き出しを①の状態(STDと同し)まで増やし、リアの車高を再度10mm上げてフロント下かりの状態にする。こうすると直進安定性はよく、旋回性も高くなったが、ハンドルの切れ込みかUターンでも高速コーナーでも現れてバランスの悪さを感じる。⑤フロントフォークを5mm突き出して、リアを18mmまて上げ、いちはん前下かりの状態にしたところ、直進時にかなり重くなり、小さなターンても重い。さらに旋回性が上がるわけでもなかったので、ここまでやるメリットはないと判断した。これらをベースに、僕は最終的にフロントフォークを初期の設定から4.5mm突き出してリアを6mm上けた状態をベストなものとして選択。計算で決めた基本姿勢よりも、低重心で前下がりの仕様で落ち着いた。

■パネレートの設定
基本姿勢力決まったところて、バネレートの話に移ろう。バネレートとはもちろんバネ単体の硬さのことで、これか柔らかすきるとすぐに底つきし、逆に硬すぎるとサスか動かす本来の機能を果たさない。このため自分の走りに合わせた硬さの選択か必要になる。ファイナルエフのリアに採用したオーリンズのハイパーツインCB-F用は、標準設定が比較的硬めとなっている。これは、よりハードな走りを目指してショックを交換するユーザーか多いためだか、街乗りか主体の僕はそれほとの踏ん張りを必要としていない。そこで、ファイナルエフではオーリンズのバネレートを1ランク柔らかいものに交換した。テストでは片側の1本だけを柔らかいスプリングとした中間レートも試してみたが、これてもゴッコツ感が少し気になったため、結局2本とも交換することとなった。フロントフォークについては、 CB1000SF用に開発したウィスミー・スペシャルスプリングがあったので、最初にこれを使ってみた。すると峠での走りはコシがありブレーキンクても安定するのたが、こちらも街乗り主体と考えるとややハードである。そこで、片側にCB1000SFのSTDスプリングを使用することにした

■スプリング・プリロードの調整
プリロード調整とはスプリングに初期負荷をかけることで、サスストローク全域で反力を増すことによって乗り心地などにも大きく影響を与える。これまでも伝えてきたとおり、街乗り仕様にこだわる僕としてはプリロードを抜く方向に調整して、サスの動きに自由度を大きく持たせたが、こと峠の走りに関しては、前後とも多めにプリロードをかけたほうがよかった。現状では、フロントは7mm、リアは9mmまでかけれは、走りにメリハリかててくる。切り返しのレスポンスも向上し、アクセルを開けたときに、グンツと車体が前に加速するのがわかる。ただし、これはバネレートをワンランク落としているからであり、標準のバネレートであれはここまてプリロートをかけることはないはずだ。いずれにしても、街乗りてプリロードを抜いた状態て仕上けておけは、峠に行ってもダイヤルを回すだけで対処できるのだ(STDのネイキッドモデルの多くか、このような初期設定となっているはず)。

■ダンピングの決定
小さな穴(オリフィス)を通過するときに生まれる抵抗を減衰力としている。ダンピング(減衰力)調整とは、その抵抗を変更してサスか動くスピードを制御することである。これによって乗り心地や路面追従性を変化させられるのだが、前号ても述べたように、注意すべきなのはダンピング調整でサスペンションの性能を大きく変更できるのてなく、微調整でしかないということだ。手で簡単に回せるプリロードやダンピンクを最強から最弱にしてもハンドリングに危険を及ほさないように、サスペンションメーカーだって考えている(一部レース開発部品は除く)。だから足まわりが変たな、と思った場合のほとんどが、根本的なパーツ変更をしなければ直らないといえるのだ。もちろんファイナルエフでは基本姿勢とスプリンクレートをきちんと合わせてあるので、ダンピングの調整なんてほとんどどうでもいいレベルとなっている。だから、街乗りなら前後とも減衰力を最弱とし、峠ではそれを強くしてやるだけでバッチリである。

こうして足まわりを決めた僕のファイナルエフは、まるで手足のように言うことを聞いてくれるマシーンとなった。ステージが変わっても、ダイヤルをグリグリ回せは楽しく走ることかできるようにもなったし、ステップをバリバリ擦って走らせようかウィリーしようがOK、何だってできてしまう気がしてきた。

さて、来月号てファイナルエフ企画も12回目を迎え、スタートしてから1年がたったことになる。そこでこの企画の締めくくりとして、”ファイナルエフ完全ファイル”をお送りしたいと思います。(丸山浩)



❶ファイナルというネーミングの由来は、ホンダがFDタイプで’83年に終わらせてしまったCB-Fシリーズを、僕が引き継いで完結編を造ろう、ということで、CB-FF(CB-FEは、同時進行で製作していた右ページのマシーン、エヴォリューションである)=CB-Fファイナルとカッコよく命名したのだ。このファイナルエフのコンセプトは通勤カッ飛び仕様、バリバリのチューニングマシーンというよりは、なるべくスタンダード車っぽく仕上げたつもりだが、オーナー(つまりボク)が「派手なウィリーをしなきゃダメだ」とかで排気量を1123.7cc

にスープアップ。さらに街乗りでの乗りやすさ優先のクセに、峠に行けば「今のマシーンをカモれるくらいのバフォーマンスがほしい」と思い、足まわりを丸ごと変更。とにかく"よく走るエフ!’’を目指しで一年間がんばった、丸山浩の血と汗と涙の結晶だ。カラーリングについては、9年間乗って愛着のある900FのSTDデザインを、プラシやボガンを入れ込みながら塗装し直し、サイドカパーの排気量も900のままとした(純正モディファイタイプのペイントは1275円。送料別)。

❷メーターは1100F用に交換。スイッチ顆もCB-Fの純正を使用している。ヒューズボックスはコストダウンも考えてそのまま使用しているが、できれば他の場所に移したほうが使いやすい。ウィンカーはCB-Fの顔ともいえるパーツ。こいつも純正をそのまま使用し、取り付け位置も変えないようにしている。ハンドルパーはCB1000SFを採用

❸CB-Fエグゾーストシステムはボクの苦心作だ。正直に言って、今までSTDステップを使用した排気系ではバンク角を確保できているものがほとんどなかった。峠ではエキパイが接地するので右コーナーが攻められず、タンデムをすれば交差点の右折時ですら、いきなり車体が持ち上がって転びそうになった苦い経験があったので、自分で造るときには最低限、最初にステップが接地するくらいのバンク角は確保しておきたかった。パワーを稼ぐための4-2-1方式の取り回しにも本当に苦労した。価格はアルミサイレンサータイプが16万50.00円、カーボンサイレンサータイプが21万5000円。オイルフィルターおよびドレンボルトの着脱可。センタースタンドの装着は不可。音量はバッフル装着時で約98db。重量はSTDに対して約8kgの軽量化となっている。

❹ファイナルエフの大まかなエンジン仕様は、まずワイセコのΦ,72mmピストンで総排気量を1123.7ccとし(シリンダーは1100用)、900Fのシリンダーヘッドを加工して圧縮比アップ。カムシャフトは吸気側にCB1100R、排気側にCB1100Fのフルバワー仕様を組み合わせ、進角タイミングもそれにあわせて変更している。また、通常のエンジンチューンアップとしての燃焼室形状変更、ポート修正、バルブ加工バルブシート脩正。クランクおよびピストン、コンロッドのバランス取り等々。だが、最も苦労したのは、750. 900、1100F、1100Rの組み合わせで、いかにコストパフォーマンスよくベストのパワーを確保しつつ、さらに耐久性を景大限に上げることができるかということだった。4種類くらいの部品の中から最良のものを選ぷという感じだったから、ファイナルエフのエンジンを造るのには他のエンジンの3~4倍はコストをかけたことになる。それだけ知識も増えたのだが。

❺パワーアップに伴うSTDキャプレターのセットアップおよびエアクリーナーボックス加工+パワーフィルター装着は、ファイナルエフ最大の難関度かつ最高のセールスポイントでもある。しかしコストパフォーマンスはメチャクチャ悪い。まず最大パワーを引き出すには1100Fの口径が必要。もちろん750や900のキャブレターでもスロットルレスポンスを向上させることはできるが、やはり最大口径を持つ1100F用を使いたい。そしてセットアップ。基本的にはダイノジェットキットと同じ考え方でセッティングしていくのだが、クリーナーボックスの仕様やエンジンおよび排気系の仕様に合わせて必ず個々にセッティングを合わせる必要がある。ところがキャブのインナーパーツが少ないわ、ボックスがついているわで、バッチり決めるまでの時間はメカとふたりがかりで数十時間を要することになるので、とても時間工賃での値段はつけられない。ファイナルと同じ仕様のエンジンであれば、データが揃っているので簡単にできるのだが、まったく仕様の違うエンジンでセットアップするのは、初めてのときほどではないにしろ、あまりやりたくない作業ではある。でも、どこをいじればどうなるかということはわかっているので、必ずセッティングを決めることができる自信はあります。STDキャプにこだわる人は来てください。

❻ステップは、純正ヨーロッパ仕様が、ポジション、形とともに最も気に入っているためUS仕様から変更を行った。一式揃えると部品代だけで8万3525円にもなってしまうが、こいつもこだわり選択だ。

❼フロントプレーキキャリパーには、効力+コントロールフィーリングともに気に入っているブレンボ4ポットを使用。CB1000SFのΦ310mmSTDディスクに合わせると、どうしてもキャリバープラケットが大きくなってしまうのだが、ここはかなり妥協している。Φ320mmの鋳鉄ディスクと組み合わせればブラケットも小さくなるのだが、コストを下げるためやむなく断念。タイヤは前後ともBSのBT-54を装着

❽オリジナルで開発したCB-F用リアアーム(12万6000円)は、CB-F独自の外観を損ねないようシンプルなものとし、なおかつフレームとの強度バランスを考えた設計で装着後の旋回性向上も考慮している。STDのスチールアームに比べ軽量化を行うこともできる。750、900、1100すべてに装清するための付属バーツも用意した。またピッグ1ホイールボルトオンキット(3万5000円)を装着すれば、CB1000SFのリアホイールおよびリアプレーキAssyが加工なしで装着できる。このスイングアームとビッグ1ボルトオンホイールキットは、CB1000SFのリアホイールまわりを持っている人には絶対おすすめ。

足回り編、そのパート1”セッティングを行う際の方法とパーツの選択”


1997年1月 誌面より抜粋

今月から足まわりのセットアップが始まる足にはウルサイ丸山さんだけに書きたいことが山ほどあるそうで、今回は本格的に走る前に考えておくべきことをレースでの経験を基に書き並べてくれた

足まわりセットアップの基本について




いよいよ僕のウデの見せところてもある、足まわりのセットアップた。その前に、ふたん僕がとのようにして足まわりのセッティングを行っているか、レース経験を基に簡単に説明しておこう。僕はレースを始めて12年になるか、毎年新型のマシーンを購入したときには、足まわりからセッティングを行うようにしている。キャブレターやエンジンのセットアップについては3月の暖かい時期に決まれはよいのて、しばらくは特に気を使わずに濃いめのガスで走ってしまう。そこで最初に行うのは、マシーンの姿勢を決めることだ。

レーサーの場合、車体の基本設計はしっかりとできているので、姿勢変更といっても、単に車高、すなわち重心の位置が高いか低いか、前下がりなのか尻下かりなのかを決めていけはよい。スーパーバイクなとで完全新設計のニューモテルをその年のレースに投入するときなとは、あまり開発状況=戦闘力か思わしくないと、開幕戦を過きてからも大がかりな設定変更を行うこともあるが、こんなことをやっているときはだいたい成績も芳しくない。あくまでも開幕戦までに基本姿勢を見つけてから挑むのが本当だ。

そして基本姿勢がある程度決まれば、第2段階として行うのが、前後ショックのバネレート選定である。

基本姿勢はレースシースンが始まる前にある程度出すことができるのだか、ベストラップの出せるバネレートを決定するには、決勝レースの本気バトルの中で出した”自分の能力を超越した走り”の中でなくてはできないことが多い。なせなら、テストでよくても、決勝で”よく転はなかったな!” と思える突っ込み争いをしたときに足りなくなってしまい、フォークか底

付きしてしまうこともあるからだ。それで今では決勝レースを想定して、テスト中にベストと思えるバネのワンランク上のレートを組み入れることもある。

バネレートをある程度限定したら、第3段階はそのバネをいかに有効に使用するかを決める、スプリンクプリロードの決定だ。マシーンがきちんと走るかとうかは、ほとんどがここまてで決まってしまう。もしここまでの項目か完璧に近い状態であれは、最後に残っているダンピングの調整はほとんど必要ないに等しい。

もし調整するにしても、硬けれは減衰力を抜き、柔らかすきればそれを強くすれはいいだけだ。

しかし世間一般では、やたらとこの減衰力を執拗にいじる傾向にある。なぜならば、伸ひ側と圧側のダンピンクを使い分けることにより、走行中の車体の姿勢やバネの硬さを微妙に調整することかできるからてある。しかし厳しい言い方をすれは、レースシースンが始まるまでにマシーンの基本セッティンクを仕上けきれなかったから、それをごまかすためにいじっているようなものである。まあ、それ以外にもレースにおいては、タイヤテストなどで(僕の場合、年間12レースを異なるタイヤで走ったことも多かった)、タイヤ形状の違いによって車体の基本姿勢か変わってしまうのを補正するために行っていることも多いのだか。

ここて注意してほしいのは、ダンピンク機構による姿勢の変化はこく徹妙な範囲ということた。レースシーンにおいては、この微妙なところか重要なのだが、こと市販車で足まわりを変更した場合、基本姿勢からまったくずれてしまったパーツを組み込んでしまうと、いくらタンピングて補正しようと思っても、きちんと走るように仕上けるのか不可能なことか多い。

以上の事柄を考慮しながら、本題となるエフの足まわりについてセットアップを進めていくのだが、カスタム車の足造りて最も重要な項目は、最初のパーツ選びなのである。メーカーがさんざんテストして、ある程度完成されたレーシングマシーンならともかく、ショップ単位で足まわりを大きく変更した車両を造る場合は、後で違うパーツを組み込むときにフロントフォークやスイングアームまで交換しなくても問題が出ないものを選択したほうがいい(とてもお金がかかるからね)。もちろん最初は理論的に図面上だけて基本となるディメンションを決定してからパーツを選ふわけだか、もしその段階でベストハンドリングを出す自信がないのなら、その後補正を行えるアジャスタブルショックを選んでおくことも重要だろう。

ファイナルエフのパーツチョイス

ファイナルエフの足を決める大きなポイントとなっているのは極太のタイヤであり、またエフらしさを保っために18インチのホイールを使用しようということだった。さらにそのリムに合う最新のタイヤか常にデリバリーされていることや、低価格でホイールが手に入ることも重要。これらの課題をすべてクリアし、きちんと走るマシーン造りを行うために、僕はフロントフォークから選択していった。

結論を先にいえはCB1000SF用(調整機能なし)Φ,43mmを採用したのだが、その理由は自由長が800mm以上あることとウイズミーのタンパーキットの存在だった。太いタイヤを装着して60~80km/hの速度て軽快な倒し込みを狙うには重心全体を少し上ける必要があり、それには長めのフォークでなくてはならない。そして

バネレートの選択に加えてダンパーキットを使えは、プリロードの変更やダンピングての補正で調整幅か広かる。合わせてステムにCB1000SFの部品を使えば、オフセットかCB900Fの45mm対してCB1000SFは40mmだからトレールを多く取る ことができる。CB1000SFのパーツは太いタイヤにマッチした現代的なハンドリングを作り出すのに適したものといえるだろう。

そしてタイヤ。リアに関してはそれほど意識しなかったが、ハントリングに大きく影響するフロントタイヤについては、これもまた寝かし込みのスピードが速くなるブリヂストンのBT54を選択している。CB1000SFに装着するとかなりクイックなハントリングを示すBT54だが、ただでさえハンドリングか重くなりそうなファイナルエフには、これしかないと思った。

リアショックについては、オーリンズのフルアジャスタブルツインを選んている。もちろんオーリンズ本来の作動性も買っているか、今回さらに重要なのは、車高調整機能があり、車両の姿勢を作り出すことかてきることだった。さらにオプションでバネレートを選択でき、プリロードやタンピングの調整が簡単にできることもこの製品に決めた理由てある。そして太いタイヤとしっかりとしたショックユニットで受け止める路面からの情報をしっかりとフレームに伝えるために、オリジナルのスイングアームを造っておいた。

ここて誌面か尽きてしまったか、やはりいちはん大事なのはパーツチョイス。これかてきていれは後のセッティングは簡単なのた。次号はセットアップの実践編とするので楽しみにしてください。(丸山浩)

基本仕様か完成!残るは足まわりのセッティンクだ


1996年12月号 バイカーズステーション誌より抜粋

丸山CB-Fは、先月紹介した足まわりパーツの組み込みを終えると同時にリペイントも完成今月はカラーでその雄姿をご覧いただく。あとはハンドリングを煮詰める作業を残すだけとなった

前号はCB1000SFを流用した足まわりのキットパーツを用意したところで終わったが、1 カ月間でキットの装着はもちろん、カスタムペイントも仕上がって、今回はついにカラーページで登場。どうです皆さん、とても8年乗り続けたエフには見えないでしょう!

いつもウチのマシーンは派手なペイントばかりが紹介されていたので、ファイナルエフではSTDのイメージを崩さないよう、少しおとなしめでいくことにした。とはいっても、そこはYFデザインの深沢さんによるカスタムペイント。一見したところでは900Fと同じデザインだか、ステッカーなどは一切使用しないでラインと文字にグラデーションを多用しているので、近くで見るとSTDの塗装よりも格段に質感が向上している(ペイントはウィスミーても受け付けている。写真の仕様は外装一式を送ってもらった場合で約12万円。もちろん車両持ち込みもOKだけど、このときは取り外し料金として5000円が加算されます)。「なんだ、金をかけたわりには全然雰囲気が変わらないじゃないか」と思う人もいるかもしれないが、逆にそう思ってもらえれば大成功。なるべくSTDのイメージを崩さず、ホンダがエフを進化させていったらこんな形になったのではないか、というコンセプトどおりの出来栄えで、まさに‘‘ファイナル”と呼ぶにふさわしいと、我ながら感心しているところである。

今後の課題、ハンドリングの決定



このように、ファイナルエフはほほ完成したといってよいのだが、しかし最後の仕上げが終わっていない。人形作りに命を入れ込む作業があるように(本当かな?)、ハイクにだって最後の仕上けが肝心。それがハンドリングを造り上げるシャシーセッティングなのだ。こう言えばカッコいいけれど、実際には大変地味な作業の積み重ねだ。車体の重心を少し上けてみたり、逆に下げたり。コーナリンク中のマシーンの姿勢を決めるために前後ショックのスプリングレートを何種類も試して、それに伴うダンピングフォースの調整を行うといったように、ある種の職人技が要求される。外観

的に変化が生じることはほとんどないかもしれないが、カスタムバイクにはこれがとても重要な作業となる。まあ、ウイズミーには腕のいいテストライターがいることだし(私、丸山のことです!)、ここはじっくりと時間をかけつつ、次回までには自分でも納得のいくハンドリングに仕上げるつもりだ。

そして理想とするハンドリンクが完成したら、このフロントまわりをキット化して販売する。フロントフォークはCB1000SFのΦ,43mm倒立をベースに低フリクションパーツと伸び側ダンパーキットを組み込んだスペシャルで、これをCB-Fに組み込むためのステムキットも製作する(ステム長が750/900と1100 で異なるため、2種類を造る)。もちろん、これらを装清したときに突き出し量やプリロード、減衰力をどうすればいいかなど、まともに走るようにするためのセッティングデータも取りそろえようと思っている。

しかし、フロントまわりに関してはどこまで用意すればいいのかを決めるのに時間がかかった。ウイズミー・リアアームにCB1000SFホイールを組み合わせるボルトオンキット(おかげさまで注文が殺到しています)は完璧に作成できたのだけれど、ステムはメーターステーやライトステーの形状だけでもずいぶんと多くの意見があり、人によってはシビエのヘッドライトを使いたいとかCB1000SFを流用したい、ウィンカーも小さくしたいなど、あまりにも求める仕様か違いすぎる。だから細部はみんなのセンスにまかせることにした。もちろん、車両を持ち込んでくれればカッコよく造ります。また、今はバーハンドルしか用意していないか、セパレートハンドルも要望があれば考えたい、いよいよ次号では、足まわりがパッチリ!決まった‘‘ファイナルエア”の華麗な走りがお見せできるはずだ(佐々木さんのCBも早く完成させてよ!)。さらに12月には冬のテイスト・オブ・フリーランスも控えてい

る。こちらでは夏の雪辱を必ず果たすつもりなので、Fゼロクラスをお楽しみに。(丸山浩)

すでに準備が完了した足まわり編


1996年11月 誌面より抜粋

丸山さんとウィズミーの手によって順調に予定を消化しているこの連載は次なるステージである足まわり編に突入今回は方向性と使用部品の説明を行う

ホーネットをヒントとする足まわり

ファイナルエフチューンは、いよいよ足まわり編へと突入し、話も佳境に入ってきた。ここではそのプランニングについて少し説明をさせていただきたい。

CB-Fを頑固にドスタンダードで走らせていると、どうしても気になるのがフロントブレーキの利きの甘さである。特にエンジンを強化したファイナルエフでは、”止まれない”と思うとスロットルを全開にできないというジレンマに陥ってしまうし、そもそも危ない。

また、欲をいえばスプリングだけで動いているような安っぽい作動感のサスペンションもなんとかしたい。タイヤもスタンダードの足まわりならどんな製品でもそこそこバランスがよく、ステップを擦るくらいまで寝かせられるが、サスペンションの性能が上がれば、やはりワンランク上のグリップカが欲しくなる。

そして、大きなテールランプと横に張り出したウィンカーがリアタイヤの細さを強調し、まるでやじろべえを連想させてしまうエフの後ろ姿もなんとかしたいと思っている。これら4つのテーマ、

1.ブレーキの強化

2.サスペンション性能の向上

3.タイヤのグリップカ向

4.現在のリッターバイクに負けない風格ある後ろ姿に的を絞り、足回りの変更を行うことにした



これらの項目は、CB1000SFのパーツを流用すれば簡単に解消でき、実際には組み込みを行っているオーナーの方も少なくないだろう。ファイナルFエフもCB1000SFのパーツを使うつもりだが、公開の足回り編ではそれらをただ組み込むのでなく、太いタイヤを履かせてもエフらしいハンドリングを失わせないという目標を課すことにした。乗り心地がよく。街乗りなどの低速度では軽快なハンドリング。クルクルとは曲がらないまでも、走らせやすく安定感のあるコーナリング特性。これらを残したままで、STDの数段上をいく実力を持った足まわりを完成させたいと思っている

とまあ、ずいぶんと欲張った希望を述べてしまったが、正直いって1年前の構想段階では僕も自身がなかった。しかし、太いタイヤを装着しても僕の理想とするようなハンドリングが存在するとわかったため、やはりCB-Fでこれに挑戦してみようと決心したのである。そのオートバイというのが、250ながらCBR900RRと同じリムサイズを持つホーネットだった。

こいつを試乗会で乗る前まで、幅の広いタイヤが、路面の荒れをすべて拾ってしまって乗り心地が悪く、ハンドリングも重いだろうと思っていた。しかし、実際乗ってみると、重いどころ50~60km/hぐらいまでの速度域では、スパスパッと軽快にマシーンを寝かし込んでいけるのだ。そして乗り心地も良い。太いタイヤは路面との接触面積が多く、ギャップを拾いやすいもんだが、なにせ細いタイヤの3倍近くの価格だけあって、タイヤ自体のギャップ吸収性がとてもよく、マイルドで疲れない乗り味だったのだ。

もちろん、高速のコーナーになってくると、足まわりはしっかりしていてもフレームのよれが感じられるようになるといった弱点もある。でも。多少ヨレを感じたとしても、スロットルを戻すほどひどくなければ、逆に限界までマシーンを操ってるといった満足感ともにそれを楽しむことができるのだ。

ホーネットとの遭遇は、ファイナルエフの方向性を決める上で大いに約立った。CB-Fの足わまりをいじりだすと、まずタイヤを太くして、次にサスペンションを固めて、されにそれに耐えうえるようにフレームをガチガチに補強し…というパターンにはまってしまい、ただ単に重くて曲がらないバイクになりやすい。もしこの思想でマシーンを完成させるのなら、車体を徹底的に軽量化して、されにディメイションも今日的に大きく変更していかなければならないはずだ。これだとスペンサー仕様といわれるレーサーにどんどん近づいてしまい、僕がストリートで使うエフの走りではなくなってしまう。きっと費用もかかるだろう。

形だけのレプリカならともかく、太いタイヤを取り付けながらストーリーとで”よく走るエフ”を造るのならスペンサーレプリカとはまた違った思考で足まわりを造らなければならないはずだ。そのヒントとなったのが、ホーネットの角パイプ1本からなる骨格が生み出すハンドリングであったのだ。

強化すべきところは強化して、極太のハイグリップタイヤが前後で別々に受ける力は車体の背骨(メインフレーム)をしならせることによって調和され、軽快かつ曲がるハンドリングを生み出す。このCB-Fの柔軟性のあるフレームにはうってつけである。

CB1000SFのパーツで足まわりを造ること自体はいたって簡単。しかし、実際には形とし見えない理想のハンドリングを造るということが、いちばん時間と労力とを必要とすることだ。CB-Fの”ファイナル”にふさわしいハンドリングが出来上がるかどうか、今後のセッテイング編に期待していただきたい。

電気まわりの改善が始動性向上への近道なのだ!


1996年10月 誌面より抜粋

ファイナルエフのエンジンは確かに速いが丸山さんの狙いは高い完成度であり特に始動性向上は大きなテーマとされた
また、完成したスイングアームも紹介する

ファイナル”F’’ 計画も中盤にさしかかり、エンジンパワーは絶好調!そこらじゅうでウィリーをしまくり、最高速も240km/hを軽くオーバー。そろそろ足まわり編にでも移ろうかといったところだが、その前にエンジン編で最も重要な各部の細かな煮詰めについてまとめておきたい。
ファイナルエフのコンセプトを復習すると
1.メカ音の減少
2.始動性の向上
3.バッテリー上がりの解消
4.ギア抜けの防止
5.耐久性向上
を、パワーと両立することとなっている。まず、最初の”メカ音減少”については、エンジンのオーバーホールでかなり抑えることができた。さらに慣らし後のバルブクリアランスやカムチェーンテンショナーのこまめな調整が、メカ音の減少やエンジンライフの向上にもつながるだろう。
そしてエフで気になるクラッチからの異音については、クラッチアウター奥に入っているシムの厚さを変更してクリアランスを調整、クラッチアウターのガタを減らすことで減少させることかできた。
4番目の”ギア抜け”については、オーバーホール時のミッションメインテナンスで改善。さらにステッププレートを北米仕様のFBタイプから欧州向けの1100F用に交換し、シフトペダルをリンクを介して操作するタイプとしたことで、かなり節度はよくなった。しかし、ステップまわりを11OOFのオールニューにするのに、パーツ代が8万円を超えたのには驚いた。バックステップを購入したほうが安いのだ。
そして5番目の‘‘耐久性向上’’たが、これについては11OOF用パーツの組み込みでかなりカバーされている。もちろん排気量アップでスタンダード以上のパワーを与えると、カムチェーンやプライマリーチェーンの強度、クラッチディスクの容量が不足してしまうことは否定てきないか、現時点で特に問題は出ていないので、このままテストを続行する。

永遠のテーマ”朝の一発始動”
問題は、2番目の”始動性向上”と3番目の”ハッテリー上がりの改善”だ。このふたつはCB-Fの永遠のテーマに思えてきた。特にエンジンをチューンアップした場合は、てきめんに始動性が悪くなる。そして、これがバッテリーを上げてしまう大きな要因になってしまうのだ。そこで、僕がいかにこの課題に向かってテストを行い、改善を加えてきたかを紹介しよう。
まず、始動性が悪い最大の原因は、まったく出力の足りないスターターモーターにある。特に1100Fは、さらに排気量を上げて圧縮比までも高めたなら、クランキングが重くてスタータークラッチが空転しやすくなる。ここでバッテリーの勢いが足らずにケッチンでもくらおうものなら、スタータークラッチに逆回転の力が加わり、最終的に崩壊を招くことになりかねない。
そこで今回真っ先に行ったのは、始動時にスターターを勢いよく回すために、元気のよいバッテリーに交換することだった。ファイナルエフでは、使い古したバッテリーを充電しながら使用していたため、圧縮の高さにいとも簡単に負けてしまい、”カキュッキュッ、キウ、パシュッ”と何度もケッチンをくらったことで、組み立て時に新品に交換したスタータークラッチがすでに壊われそうになっていた。そういうわけで、元気のいいバッテリーを使用することをおすすめする。もし交換するのであれば、STDよりもワンランク大きなバッテリーを積むというのも手だろう。STDがYB-14LA2であれば、YB-18LAあたりとする。少し横幅が大きいが、ケースに入れられないことはない。エフの充電機能はどちらかといえば低いために大きな蓄えはできないが、始動時の初期電流が大きくなるためにスタータークラッチが食いつきやすくなる。さらに同じ容量のものでも、メインテナンスフリーバッテリーにすることで、小型軽量で初期電流を上げることもできる。
しかしこの時代のマシーンにメインテナンスフリーバッテリーは規格外であり、バッテリー会社に問い合わせたところ、詳細なしで、「破裂の危険性があるので使用できない」との答えか返ってきた。
確かに密閉式バッテリーの場合、過電流による充電は危険。僕はレース用の小型MFバッテリーを過充電で何度も破裂させた経験がある。しかしCB-Fの場合、どのような回転域を使用しても充電しすぎることはなく、特にバッテリーが古い場合、少しは大電流で過充電してくれといいたくなるレベルなので問題はないだろう。
それでも安易にすすめることはできないので、とりあえず僕のエフで実験をしてみることにした。
またスタータークラッチの滑りに関しては、エンジンオイルのグレードも大きく影響するため、現在、真夏の渋滞でもエンジンが熱ダレを起こしにくく、スタータークラッチも元気よく食いつくオイルをテストしている。よい結果が出たらお伝えするつもりだ。

プラグチェックもエフには重要
さてさて、またも登場してしまうが、例の漫画‘‘バリ伝”で、主人公の”グンちゃん”がプラグチェックをしていた姿を覚えているだろうか。この時代の車両には必要な儀式なのかもしれないが、”カッ飛び”時の焼けだけを見ていたのでは、エフはよく走ってくれない。そこで、始動性に重点を置いたプラク選択についてテストしてみることにした。
CB-Fは、NGKのD7EAもしくはD8EAをスタンダードプラグとしているが、エンジンチューンを施した場合はどうしてもパワーを誇るためにプラグ熱価を9番もしくは10番にしてしまいたくなるのだ。ところが熱価の選択はエンジンの仕様よりも走り方による影響が大きいので、高速道路でガンガン飛ばすのなら高回転の伸びもよくなるかもしれない。しかし”通勤カッ飛び”くらいであれば、それほと熱価を上げる必要はない。むしろふだんの始動性を考えるならば、たまの高速カッ飛びで白く焼けていても、通常の街乗りでプラグがくすぶらないように低い熱価を選択するほうが、エンジン始動時にはいいはずだ。また、かぶってしまったプラグの復舌は、低い熱価のほうが早いのだ。
さらに始動性向上の秘技を盛り込むため、僕がすすめたいのはNGKのDP8EVX-9だ。まず”p”の規格だが、これは電極の先端形状が違う。通常の”D” プラグよりも長めにできているので電極はピストンヘットに近くなり、くすぶりやカブリ対策と同時にエンジン始動時の着火性を向上させてくれる。続いて最後に表示される”-9”。これは熱価を表しているのではなく、プラグギャップの指定だ。
通常のプラグギャップ指定は0.6~0.7mmとなっているが、これは電極が消耗してプラグギャップが広くなっても許容範囲を保たせることから、少し狭
く基準をとっているようだ。マメに点検することを前提とするならば、最初からプラグギャップを広めにとっておいたほうが火花は強い。そこでプラグギャップが9mmで出荷されている”-9” を使用する。さらに、少し高価(STDの約3倍)になるが、着火性か向上するプラチナプラグのVX規定を選択する。
プラク選択のついでにプラグキャップとプラグコードについても触れておくが、これはリーク対策に重点を置いた。特に雨天時には、シリンダーヘッドに水が溜まってリークを起こすとエンジンのバラつきや始動困難に陥ってしまう。古くなってしまったCB-Fでは、プラグキャップやプラグコードの絶縁が劣化していることが多い。今回はシリコンゴムを採用したものに交換し、耐久性、対電圧性を持たせ、どのような走行条件においても安定した始動性を確保しようとした。
以上、本当に細かいことではあるが、ここまでやれば一発始動も夢じゃない。とにかくエフは、機嫌のいいときと悪いときの差が激しすぎる。スタートは”カキュキュ…キウ…チキチキ”ではなく”カキュン、ボンッ!”と気前よくいきたいものだ。(丸山浩)

ついに極めた!?STDキャフレターのセッティンク出し


1996年9月 誌面より抜粋
後輪出力104Ps、最高速度246km/hという実力を備えたファイナルエフだが、これには吸気系のリセッティングがポイントとなったそこで今月はSTDキャプレターの話である

STDキャフのチューンアップ
前回報告したように、今月は”STDのCVキャブなのに、アクセルワークだけでウィリーするエフ”にするためのキャブセッティングについて話をしよう。
正直に言えば、チューンアップしたエンジンにFCRを組んてしまえば、簡単なセッティングだけて‘‘お客様にご満足のいただけるパワー”をドッカーンと出してしまえるのだが、STDキャブのドロンとしたフィーリングも捨てがたく、どうしてもチャレンジしてみたくなった。これが苦労の始まりである。
だいたい、負圧でスロットルバルフの動きを制御するキャブレターのセッティンクなんて、ほとんと勘に頼る職人ワザだ。おまけにエアクリーナーボックスも残すことにしたので、キャブボディをエンジンから外してシェット類を交換するまでにFCRの5倍くらいの時問がかかってしまう。しかも、”どうしてこんなものか必要なの?”と思ってしまうほど複雑な機構となっている。これからの電子制御式キャブがデジタルとすると、エフのはまさにアナログ。やたらと金がかかるわりに性能アップはたかがしれているかもしれないが、でもデジタルでは絶対に出せない”味”だがある。だから真面目に取り組んでみる気になったのだ。

すでに数十時間を費やしたセッティング

セッティングを行う際は、仕様変更の度に試乗し、気に入らないところを見つけ、また変更する。そのために、今回もキャブレターを外した回数がすでに30回を超えてしまった。単にパワーを求めるのてはなく、”味のある”気持ちいいスロットルレスポンスを見つけだす。これがまた超アナログ的な作業である。
キャブをいじる前にエアクリーナーボックスに加工を施し、吸気系と排気系の仕様を決めてしまう。エクゾーストシステムか排気効率の高いものであれは、吸入抵抗を減らすと同時に、ガスを濃くしてパワーを上けることが可能。エフに付いているエアクリーナーボックスは、容羅自体が5.4Lと小さいのて、吸入抵抗の低減は特に高回転域の力にはかなり影響する。ところが吸入口は排気量によって異なり、ファイナルエフの場合は、もとが900なので、 1123ccにしてしまうと吸入口か小さく抵抗が過大となってしまうのた。そこで吸入口の大きさを変化させ、空気の量を調整してやることでパワーを出そうというのである。
ただし、吸入抵抗を減らして空気を増やしてやると、エンジン側とエアクリーナーボックス内の圧カバランスが崩れるのか、バキュームピストンがスムースに上かりづらくなって逆にスロットルレスポンスか落ちてしまう。そこで、ダイノジェットキットのようにピストンの底に開いているバキュームホールを拡大してベンチュリーの負圧を多く取り入れ、さらに短く弱いスプリングを選択することで、アクセルひとつでフロントアップさせるレスポンスを狙ったのた。
そしてセカンダリーメインジェットを決める。このセカンダリーメインジェットは、通常のメインシェットと同しような役割を果たすはずだが、スロットル開度3/4以上の全開域だけでなく、すへての開度での微調整も行っている(これを変えることにより、アイトリング時のレスポンスにも影響が出るからだ)。しかも、その多くの部分はプライマリーメインジェットにより制御されてしまうから、それを考慮しながらジェットを選はなけれはならないから面倒た。
そしてプライマリーメインジェットの決定をする。こいつの影響力はとても大きくて、通常使う領域のスロットル開度にはほとんど関係しているといっていいだろう。例えはエクゾーストシステムを交換しただけ、もしくはエアクリーナーを抵抗の少ない社外品に交換した車両で、走行中にスロットルを戻すと”ボコボコ”とアフターファイアを起こす、もしくは4000~5000rpmて卜ルクの谷ができてしまうような車両ても、こいつを1~2ランク上ける(濃くする)だけである程度は解消してしまうほどである。もちろん、セカンダリーからの影響も考える必要かあるか、これて大まかなジェッティングか決まる。
最後はパイロットスクリューの調整。これで極低開度域からのスロットルレスポンスを向上させ、全域におけるつながりをよくすることができる。また、各気筒ごとの同調をとることを忘れてはいけない。これをしっかりと行うとアイトリングがとても安定し、これがクラッチから出る打音解消にもつながるのた。

気持ちよく攻められるバンク角を確保

ニューコンセプトを確立させるためには、デサインも新しいものを考えなくてはならなかった。先ほとも書いたように、パワーを確保しつつ、しっかりと消音をするならば、それなりに消音器の容量を大きくしなければならない。となると、大きなサイレンサーで抜けのよさを確保しつつ消音させることになるのだが、今の時代のリッターバイクのように極太のサイレンサーを使用したのでは、いまいちカッコが悪い。さらに前回も触れたとおり、CB-FのSTDステッププレートに極太のサイレンサーを使用すると、どう考えてもバンク角が少なくなってしまうのだ。
そう考えると、輸出用のSTDエグゾーストシステム機能はすごい。メガホンタイプでパンク角を確保しつつも、2本出しのために消音効果が高く、音の迫力もそこそこ。サイドから見た流れるようなスタイルも最高だ(ちょっと重すぎるけど)。これで集合サウンドだったら…と思ってしまうのだが、1本にしてしまうと消音しきれないだろうし、抜けも悪くなるので、結局はサイレンサータイプで容量を稼ぐしかないのである。そこでウィズミーパイプでは、サイレンサーに長さ500mm,Φ100mmの細いか長い筒を使用してバンク角を減らさないようにしつつ、消音効果も狙う。さらにエフの流れるようなボディラインにマッチングさせこれがニューデザインというわけだ!
なーんて、ちょっと大げさかもしれないが、しかしあくまでも昔のイメージにこだわらず、出カアップとバンク角確保を両立。なおかつエフの新しいボディラインを形成するにはそれなりの努力かあったのだ。
まず、4-2-1の集合部は絶対にフレームよりも外には出さずにケースの下でまとめるようにした。そしてバンク角を確保するため、そのまま中央部を通って後でもっていき、ステッププレートのところで曲げて、初めてパイプをサイドに出す。
「ここを通してきたら、こう曲げて、ああして、サイレンサーの出てくる角度はこうだ!」と僕。とはいえ実際に自分でパイプを曲げるわけではない。あくまでも僕の思い込みを片っ端から言っているだけだから、加工する側はたまらない。「1回曲げて素直に出せはいものを、2回も3回も曲げたら、それだけでも値段は倍だぜ、倍,!」と言われなからも、僕は「高いのはヤダけど、カッコ悪いのはもっとヤダ」と何度取り回し加工の段階でだなをこねたことか。
それだけに、まぁ見てやってください。テールエンドまでのこの脱出角度。ステッププレート下の角度に並行に走るテールパイプ。もう見ているだけで涙がポロリと落ちるようなシブさじゃないですか。もちろんバンク角だって箱根でテスト済みだ。
久しぶりに箱根をエフで真面目に攻めてびっくりした。エフってすごくバンク角が深いのだ。写真をよく見てもらうとわかると思うが、昔のバイクはシート高が高いためステップ位置もかなり高い。僕も最初はなかなかステップが擦れなくて、焦りながらもマシーンを寝かしていったのだが、そのうち全身擦っちゃうんじゃないかと思うほど寝かしたころで、ようやく”ガリッ!”ときた。”CB-Fのオニ”だな。
それはともかく、最初にステップが擦ることを確認できたので、これならば気持ちよく攻められることがわかった。ただし、STDのステッププレートに合わせてるのであれば、このへんが限界。サーキッドなどでケースまで擦ってしまうようなバンク角の場合保証しかねる。もっとも、そんな人ステップも交換しているだろうから、それに合わせたテールパイプも今後は考えていくつもりだ。その時はステップ位置もまちまちなので、そのつど合わせて作ることになるだろう。ストリートでの使用であれば、とりあえず、充分なバンク角を確保したつもりだ。

コーヒー飲むならエフの右斜め前に座るべし!
僕の願いをすべてかなえてくれるエグゾーストシステムを造ったつもりだが、ひとつだけ妥協したものがある。というよりあえて無視させてもらってのだが、センタースタンドだけは流石につけることができなかった。もちろん、少しでもバンク角を稼ぐためにだ。整備性が悪くなるのはわかっちゃいるが、オイル交換なんてドレンボルトを外したら、車体を直立させてマーシンに座って待つ。オイル量チェックなら左手でハンドル持って、反対側に倒れないように「オットット」と言いながらゲージをさす。チェーン調整だって四輪のジャッキを駆使すればできないことはない。
だいたいエフのシブさはサイドスタンドのときにある。ツーリング先の山の中でちょっとひと息。道の反対側にある自販機を見つけたら、必ず5メートルほど手前(ここがポイント)にマシーンを止めサイドスタンドを立てる。そして右斜め前方に歩いて行き、缶コーヒーを買って・・・振り返ったそのとき!なお、なんとエフのシブくてカッコイイことか。スマートなタンクに下にデカいエンジン。細身のエグゾーストパイプがエンジンを包むように這い、サイレンサーエンドはエンジンの前傾を強調するかのことく跳ね上がる。これを見ているだけでエフとともに過ごすコーヒーブレイクは時間を忘れさせてくれる。まるで小説のような、劇画のような・・・。これそシブさの極致だ!
おっと、つい感傷に浸って、残りのスペースがなくなってしまった。今回は思い込みも激しくずいぶんと勝手気ままに語らせてもらったか、次号では、オイルやプラグ、チェーンなどの細かなメインテナンスに関すること、そして少しはタメになりそうなSTDキャブレターのセッティングについてリポートしたい。なんといっても、最近はこれでひたすら苦労しており、いまだに”まだよくなる!” と思ってやり続けているところだか、STDキャブレターを大事にしている皆さんのためにもバッチリと知識をため込んてセットアップするから、楽しみにしていてくたさい。それではまた来月お会いしましょう。(丸山浩)

エンジン編み立て完了慣らし走行も始まりまずはひと安心


1996年7月 誌面より抜粋


着々と計画を進める丸山さんの指揮の下ファイナルFのエンジンが組み上がったここでは作業を終えた感想とともに慣らし走行についても語ってもらった次回はいよいよ全開である

苦労の末にエンジン完成
やった.1ついに完成しました、ファイナルFの1123ccエンジンが。正直いって苦労しました。何がというと、今回の取材に合わせて、全バラ状態から約3日で組み上げなければならなかったのだ(組み立ての詳細は連載の最後に紹介予定)。スタンダードの900ccならともかく、1123ccへの変更および加工が随所に加わるため、組み立て中に問題が多発しないよう、事前に下調べとリハーサルのようなものを行いながら取材日に備えた。それでも、途中クランクケース加工のし忘れでシリンダーが入らないなどの難問に出くわしたが、めげずに頑張った、浅井、北嶋の両メカニックと、それにつきあった編集部の方々には、感謝、感謝。でも、当日の夜に間に合わせたウィズミー・プロトタイプのCB-F用エグゾーストシステムを装着し、眠い目をこすりながらセルを回してその排気音を聞いたとき、僕は心臓がバクバクして痛むほど感激したのだ。
ここで、走りだす前にファイナルFのエンジン仕様と注意点を蘭単におさらいしておこう。

〇まずは腰下。大事なところとしてはミッション系部品と各ベアリングからクリップまでの部品交換で、シフトフォークは1100F用を使うのがおすすめだ。ミッションギアを変更する場合は、型式の違う車種から選ぶとギアの厚みが合わずに入らない場合があるので、必ず一度仮組みをして、ミッションが入るかどうかをチェックしてから本組みしたほうがいい。
ミッション関係のパーツ代: 4万6000円
〇プライマリーチェーンは新しいものと替えておくか、こいつを耐久性の高い1100F用にするにはクランクを交換しなけれはならない。たからプライマリーシャフト内のダンパーラバーのみを1100F用にした。
900F用プライマリーチェーン:1万5500円
1100F用ダンパーラハー(8個) :2040円
○コンロッドおよびベアリングは1100のピストンピン径に合わせて1100用に交換。パーツ代: 5万2800円
○1100F用シリンダーは、 2mmオーバーのワイセ コピストンに合わせてボーリングを行う。
1100F用シリンダー :11方2800円
〇クランクケースは、1100F用の大径シリンダーか入るように穴を拡大加工。他はボルトの径やミッションを押さえる強度が違うくらいなので、そのまま使用。
〇カムチェーン、カムチェーンテンショナーは、パワーアップに対抗して1100F用を使う。750Fの823cc仕様ぐらいであれば、こうした必要はないはずだ(逆にパワーロスの大きさがマイナスになりそうだ)。
パーツ代: 2万8785円
以上が代表的な部分だが、これ以外にもクラッチやスターター系といったオーバーホール時に必要な消耗パーツや、シリンダーボーリング、クランクケース加工などの外主費や燃焼室の加工も加わる。さらに今回はクランクシャフトのダイナミックバランスやポートおよびバルブ加工、塗装なとも行ったのて、軽く見積もっても100万円近くはエンジンにつぎ込んた計算だ。
はっきりいって、コストパフォーマンスはめちゃくちゃ悪い。しかしCB1100Fを60万円で買ってきて、大径ピストンを入れて元気よく走らせようとしたら、やはりそこから40万円かかって、同じ金額になるだろう。‘‘どうしても1100かいい”という人でなければ、過剰な排気量アップはやめたほうがいいと思ってしまった。そういう面で僕がすすめたいのは、750の823cc仕様にFCRと集合マフラー(もちろんウイズミー製)の組み合わせだ。これで充分パワフルなエンジンが出来上がる。車重も重くならないし、スポーティな走りにはもってこいだ。ただし、この仕様はレスポンス重視型。スロットルを大きくひねったときにズズズンツと出てくるトルク感は、やはり1100ccの排気量ならではのものだ。今回はこいつに魅せられて、ハマッた。

慣らしの開始と今後の課題について


エンジン完成の感激と感傷に浸っている間もなく、5月5日にウチのショップのツーリングクラブであるウイズミー東京か行った箱根までの日帰リソーリングを皮切りに、エグゾーストシステムのテストも兼ねた慣らし走行を始めた。”チューニングエンジンの慣らし” についてはユーザーの方からもよく聞かれるか、ここでエンジンを組んでいる立場とレーサーとしての立場、そして自分の愛車を長く乗りたいという三つの視点から、参考までに少しだけ触れておこう。
まず、レーシングチームとしてスーパーバイクに乗っているときの慣らしは、長いときでも2時間ぐらいで終わらせてしまう。新品パーツを組んでも、時間のないときは1 時間も走らせないで全開にしてしまうときもあるが、その後エンジンを開けてもメタルやシリンダーの損傷は滅多に見られないのが現状だ。
なぜならは、このようなエンジンは各部のクリアランスをサービスマニュアルのカラーコードなどではなく、プラスチゲージやシリンダーゲージを使ってしつこいほど測定しながら組んでいくので、組み上かった状態が、ちょうど慣らしを終えたぐらいのクリアランスでバシッと決まっているからだ。
一般ユーザーの車両は、レーサーと違って完成後に数万kmにわたってエンジンを開けることがないので、慣らしは慎重にしたほうがいいのかもしれないが、ウチではストリートチューンの場合でもレースと同じような測定方法で組んでいるうえ、オーナーに渡す前に何度もエンジンに火を入れては冷まし、また熱を入れるを繰り返しているので、本当はそれほど慣らしの必要はないと思っている。とはいうものの、自分のCB-Fかわいさに、やはりI000kmの慣らしはきちんとやるつだ。長く慣らしをやってもエンジンの状態は変わらないかもしれないが、せっかく手間ひまかけて造ったエンジンでもあるし、レースの予選に間に合わないわけでもないので、楽しみながらゆっくり距離を伸ばしたい。それに、慣らしを長くやって悪いことといったらスロットル開度が1/2以下でのジェッティングを大きく外した場合にカーボンの蓄積がし配なのと、たまに欲求不満になることぐらいだろう。
そういうわけて、この時点での走行距離は500km、ま5000rpmまでしか回してないため、全開走行のフィーリングは次回に詳しく触れるとするか、この段階で告知をしておこう。実際に走らせてみると、最初は低回転域のバラつきとトルクのなさが気になった。しかも低回転域でスロットルを大きく開けると‘ギュリギュリギュリ”とノッキングか激しく出てしまう。
そこで、ふと、エンジンに火を入れるときにレギュラソリンを使っていたことを思い出し、慌てて無鉛オクをブチ込んだところ、ノッキングが消えると同時に低回転からのトルクが向上した。通勤カッ飛び仕様のため、圧縮比は控えめの10.4:1にしたが、それでもさすがに空冷エンジン、ハイオクの効果をてきめんに体感させてくれたのだった。
低回転でのバラつきは、とうもキャブレーションのつながりが悪いためのようなので、パイロットスクリューを実走しながら調整していくと、見違えるほどレスポンスよく吹き上かるようになった。調整次第ては、まだよくなりそうだが、それにしてもSTDのキャブレーターをいじるのはとても面倒だ。実際の排気量はよりも増えているので、各ジェッティングは違ってくるはずだが、プライマリーとセカンダリーのメイン系をはじめ、どのジェットがどこまでのスロットルをつかさどっているのかは現在闘査中だ。
普通なら、こんなめんどくさいキャブレターはとっぱずしてFCRでもポーンと付ければ簡単にセッティングが出せるし、パワーもドッカーンと出るから、佐々木さんのCBをあっという間にバックミラーの点にすることは簡単だがここは一歩思いとどまって、まずはSTDキャブレターをどこまて使いこなせるかに挑戦してみることにした。また、エアクリーナーボックスにしても900用のままだが、実際には1100Fとのボックス形状に違いがあるので、このあたりもジェッティングに合わせて加工していかなくてはならないだろう。
エンジンは完成したわけだか、現時点では頭の中で計算したとおりに組み上けただけだ。キャブレターのことも含めて、これからが時間のかけどころとなる。まずは徹底的に乗り込んで、気になるところがあったらリセッティングし、また乗る。試行錯誤の繰り返しになるかもしれないが、佐々木さんに「参りました」と言わせるために徹底的に走り込むつもりだ。
次号ではSTDキャブレターのセットアップと全開走行での報告とパワーチェック、そして今回プロトタイプとしてちょっとだけ見せたCB-F用フルエグゾーストシステムの完成版の紹介をする。高校時代から憧れていたCB-Fのマフラーを製作するにあたっての’‘熱き思い”をめいっぱい語らせてもらおう。(丸山浩)

❶圧縮比を10.4:1に合わせる(高くなりすぎぬよう)ため、拡大したCB900Fの燃焼室。少しでも削りすぎてしまうと命取りになるので、何度も容積を測定しながら合わせる。加工作業は大変で慎重を要するが、1100Fのシリンダーヘッドを購入するよりは安上がりだ。
❷コンロッドの加工は、鏡面処理というよりもピストンを含めた各重量パランスをとるためのものだ。CB-F系はコンロッドの表面(硬化)処理がされていないため、リューターで削りやすかった。
❸ファイナルFに使用したワイセコΦ72mmピストン(左)と、佐々木さんのCBに使う予定のコスワースΦ,65mピストン(右)。材質がどうだの、高いの安いのと細かいことを比べるよりも、「心臓の大きさがこーんなにも違うんだよ!」ということだけで、後は何も言わなくても充分なほどサイズ違う。慣らしが終わった後に行うパワーチェックや最高速テストの結果が今から楽しみだ。
❹掃影初日、クランクケースをボーリングするのを忘れて1100Fのシリンダーが入らないというトラプル発生。事前に充分チェックをしたつもりだったが、初めて手がけた仕様だけに作業が計画どおりにいかないこともしばしば。スタッフのみなさんごめんなさい。
❺ピストンやシリンダーヘッドまわりの加工を行ったときには、必ずスキッシュやバルブリセスのクリアランスを測定しておきたい。
ピストンに粘土をのせてヘッドを仮組みし、バルブを動かして粘土の凹んだ量から算出する。今回はSTDのカムシャフトを使ったので問題はなかったが、こいつを怠ると痛い目に遭うことが多い。
❻いくらダウンチュープが外れても、エンジンをフレームに載せるときは3人がかりだ。やっぱり、ファイナルFの1123cc仕様エンジンは、900のときよりも確実に重くなってしまった。

緯み立てを目前としたファイナル仕様のエンジンパーツを紹介


1996年6月 誌面より抜粋

1100cc化を高らかに宣言した丸山選手たったかバワーと耐久性を両立させるための仕様を決めるのにはかなり頭を悩ませたその結果が今回紹介するパーツ類というわけたここで、彼の主張に耳を貸していただきたい


CB1100cc化と、その問題点

前号でバラした僕のCB900Fのエンジンは、各部のチェックを終了。今回はいよいよ1100cc化のための準備段階だ。この”ファイナルFチューン”におけるパワーアップ項目は、以下の3点が中心となる。
①Φ, 72mmピストンを使うことによる排気饂増大
②圧縮比の変更(高める)
③ ポート加工(形状にも多少手を加える)
もちろん、その他にも吸排気系、すなわちエアクリーナーボックスからキャブレター、インシュレーターに至る吸気側、さらに今回製作するオリジナルのエグゾーストシステムも重要であるが、このあたりは出力向上というよりも、エンジンが本来持つパワーを効率よく引き出し、扱いやすい出力特性に持っていくためのセットアップパーツと考えている。またそれ以外にも、各部のバランシングやクリアランスの均一化など、エンジンが発揮すべき出力をスムーズに引き出すための作業に多くの時間を割くことになるだろう。
それではピストンから話をしよう。最初はCB1100R純正のΦ,71mmオーバーサイズピストン(鍛造によるもので、 CB1100F用の鋳造ピストンよりも軽量)を使用するつもりだったが、より排気量が大きくできる社外品のΦ,72mmやΦ,73mmピストンも検討した結果、ワイセコのΦ,72mmであればヘッドガスケットも含めて無理なく入りそうなので、これを使うことに決めた。これてファイナルFの排気量は1123. 7ccとなる。
ここで余談だが、このページの担当である編集部の佐々木さんが無理やりお願いした”長期待ちのコスワースピストン”に1100用のΦ,72mmがあると聞き、ひそかに僕も完成を期待していたのだが、時間的に不確実ということに加え、後で説明する圧縮比の問題で断念。ところが、準備を進めている最中に、「ピストンがようやく到着しました!」と佐々木さんがニコニコしながら言うではないか。さらに「丸山さんの企画のすぐ後にカラーページでやりますから…」と、‘カラーページで“というところを強調されてしまった。僕はイジメにあっているとしか考えられない。しかしみなさん、後でどんなにカラーページで大きく扱われようと、実際に並べてみれば僕のピストンのほうが直径で7mmも大きいのです。佐々木さんに「いっしょに並べて写真を撮りましょうよ」と言ったら、きっばりと「それはイヤだ」と断わられてしまった。ウーン、排気量で勝てないからカラーページで来たか..。
本題に戻ろう。次は圧縮増大による出力向上であるが、1100cc化を狙った僕の900Fの場合は、いかに圧縮を下げるかということに苦労することとなった。まず各仕様の圧縮比を見ていただくと、
CB900F STDピストン8.8:1
CB 11OO F STDピストン 9.7:1
CB IIO O Fワイセコピストン 10.25:1
CB IIO O Fコスワースピストン 11.0:1
となっているが、ここで問題がひとつある。僕はシリンダーヘッドを1100用に交換せず、900のヘッドを加工して使うのだが、当然900の燃焼室容積は1100よりも小さい(ボアが5.5mmも違うから当たり前)ので、1100用のピストンを使った場合には圧縮比が上がりすぎてしまうのだ。計算では、燃焼室を加工しないでΦ, 72mmのワイセコピストンを使うと圧縮比は約12.0:1となる。ファイナルFは‘通勤カッ飛び仕様'を目指しているので、あまり圧縮比を上げずに10.4:1にすることにした。コスワースピストンを900の燃焼室に合わせると13.0:1近くになってしまう。ワイセコでもコスワースでも、燃焼室を削って圧縮を下げるしかないのだが、ワイセコのほうが削る量は少なくてすむ。これが最終的にワイセコを選ぶ理由となった。
項目の3番目となるポート加工。これは特にレース仕様にするのではなく、 1100 の形状に近くなるように修正を加える程度に留める。ここまでくると、1100F用のシリンターヘッドを購入してしまったほうが早いかもしれないが、腰上がほとんど1100Fの新品パーツで構成されるというのもしやくにさわるし、今、シリンダーヘッドを購入しようとすると16万円くらいかかるうえ、いずれにしても燃焼室やポートの修正は必要になるので、合計するとかなりの金額になってしまう。
ここはCB900Fであることにこだわって、シリンダーへッドは現状のものを流用することにした。

エンジンの完成度を高める仕様とは

以上の作業でファイナルFの基本パワーが決められる。しかし、僕が最も重視したのは、そのパワーをいかに持続させるかという耐久性と細部の改善について
❶右がΦ73nmワイセコで、左が900Fから外したSTDピストン。Φ64.5nm900用ピストン重量は、平均170.8g。組まれていた4つの最大重量差は3gだった。対して7.5mm大拡のワイセコの重量は、さすがに平均213.8gと43g曽となっている。しかし手に入れた4つのピストンの最大重量差は0.7gしかなく、精度が高い。これをさらにコンロッドと並行して重量合わせを徹底的に行う。価格の5万3000円は、11万5000円のコスワースと比ぺるとかなりリーズナプルだ。
❷❸1100ではピストンビン径が900/750mmから17mmに大きくなっている。したがって、1100用のΦ72mmピストンを使うときにはコンロッドも1100用に交換する必要がある。これによりコンロッド単体の重量は平均10g増え、ピストンピンの重量も増す。
❹900より5.5mmもポアが広い1100は、1、2番/3、4番シリンダー間の冷却風通路をなくしてスリーブ容積を確保している専用シリンダープロックを持っている(下側)。当然、1100cc化を目指すには1100用のシリンダープロックを使わなければならない。
❺1100用のカムチェーンテンショナーは極太で、ラパーの材質も耐久性の高そうなものに変更されている(写真右側) 。しかしカムチェーンを押すためのスプリングカ強力すぎて、900ccぐらいのパワーだと、逆にフリクションロスが多いこと問題となるだろう。
❻1100用のカムチェーン(上側) は、幅がわずかに広がり900用よりも耐久性が向上している。CB-Fは2本のカムチェーンを持ち、短いほうのカムチェーンBは8.2g重くなっているが、長いほうのカムチェーンAは逆に18gほと軽量化されたものが出てくる。
❼オイルクーラーは、コアが5段から9段になって容量の増えている1100F用の純正品(右側)を使用する。社外品の装着も考えたが、今後フロントまわりのセッティングを行うときの自由度を考えて、オイルクーラーのスペースが最小限に抑えられる純正品に決めた。STDのフロントフェンダーを使い、フロントフォークの突き出しの自由度やハンドル切れ角を確実に確保しておきたいからだ。
❽1100F用のクラッチフリクションプレート(右側)は、若干形状が渡更されているが、クラッチ本体の容量は基本的に変わらない。
❾そこで、1100では増大したエンジンのパワーを伝えるためにクラッチスプリングを強化している。実際、1100用はスプリングレートが上がり、自由長も900より6mmも長いのだ。ただ、これを使うとクラッチレパーが重くなることは避けられないだろう。
❿⓫クラッチアウターも1100用を用意した。⑩の900用と比ペてみると、⑪の1100用は肉抜きが多くなっているが、これ使うのは軽量化のためだけではない。センターシャフトとの間に入るベアリングが圧入式に変更され、ガタを減らすようになっているからだ。
⓬1100ではスプリングの強化によりレパーが重くなることの対策として、クラッチカバー内のクラッチリフターの機構を変更している(右側)。ファイナルFでもこれを採用することにした。
⓭⓮1100のシフトフォーク(右側)は、爪が短くなると同時に全体の肉厚が増していることがわかる。バラした900Fのシフトフォークを点検すると、確かに爪の部分はあまり使っておらず、特にセンターシフトフォークは爪の部分ではなく、ほとんと腹の部分でギアを押し込んでいる。これでミッションに弾かれることなく強引に押し込むことができれば、シフトの節度はかなりよくなりそうだ。
⓯スターターギアは軽量化が済んだパーツのひとつ(右側)。
であった。前号で挙げた”よく走るFのエンジン”を目指すための項目を再び紹介すると、
① エンジンのメカ音を減少させたい
②始動性を向上させたい
③加えてバッテリー上がりを直したい
④ ギア抜けをなくし、節度あるシフトタッチにしたい
⑤耐久性を向上させたい
となる。①の項目に対しては、クランクからドライブギアに至るまでの駆動系を見直し、プライマリーシャフト内のダンパーラバーなどの消耗品は交換していくとともに、クラッチアウターとシャフト間に発生するガタはシムを造り直して抑えていくつもりだ。
②、③については、今後キャブレターセッティングとともにさらに対策するつもりだが、発電の部分としてはブラシの交換やそれがきちんと当たり、規定値電流までしっかりと供給させるようにしておく。
スターターギアについては、1100F用の軽量化されたものがあるので、而寸久性に問題がなさそうなら新品と交換する。点火プラグはD8EAから電極の長いDPR8EA-9がピストンに当たらずに使えそうなので、カブリ対策として使用。バッテリーも充電容量に問題がなければメインテナンスフリー型に交換するつもりだ。
④ については、ギアひとつひとつの消耗度をチェックするとともに、シフトフォークをやはり1100F用の丈夫なものに交換し、しっかりとミッションが入るようにする。また、車体のチューンアップのところでシフトのリンク比なども見直していくつもりだ。
⑤耐久性向上というのはすべての部分に当てはまるが、特に今回破損してしまったカムチェーンガイドやテンショナーは強化タイプの 1100F用に交換。カムチェーンも耐久性を上げつつ軽量化された1100F純正の新品パーツに変更することとなった。
以上がエンジンの主な仕様だが、これはあくまでも最初の基準となるもので、今後は点火タイミングやカムシャフト(900F、11OOF、1100Rの純正パーツから選択)は、セッティング編で走行テストを行いながらベストなものを決めていくつもりだ。
しかし、ここに至るまでにはずいぶんと時間がかかってしまった。1100ccにすることを考えはじめたとたんにパーツチョイスの苦闘が始まり、こんなことならおとなしく1000cc以内のボア・アップに留めておくべきだったと、何度も考えさせられたのである。
1100ccに排気量を拡大すること自体は比較的簡単だが、それに伴う各部の耐久性の問題をメーカーがいかに対処してきたかということを思い知らされたというわけだ。改めてCB1100Fの完成度の高さを知ると同時に、現時点で本物のCB1100Fを所有している人か”すごくうらやましく思えてくる今日このごろだ。”
さて、次号ではエンジンを完成させてSTDの車体に搭載し、慣らし走行まで一気に行うところをお伝えしたい。もちろん、できればウィズミー・オリジナルの4-2-1集合エグゾーストシステムを付けたいと思っている。ここのところ毎日エフを眺めては、マフラーの取り回しを考えている状態だ。どうしたらカッコよくピュッと後ろに持ってこられるものか・・。(丸山浩)

❶チーフメカニックの浅井が、コンロッドの重量を合わせるためにリューターで削っているところ。ピストンも重量を揃えてやる。これらの重量合わせやクランクシャフトのパランス取りは、性能向上というよりも基本性能をきちんと引き出すための作業である。
❷バルブは900用を研磨して再使用する。ポートにはまだ手をつけていない。これらの作業は僕と新人の北島メカニックが中心となるが、時間がないので浅井にも手伝ってもらう。ここ1カ月、ガレージの中にはFのエンジンパーツが散在、多くの場所を占領している。
❸10.4:1という圧縮比を4つのシリンダーヘッドすべてで得るために、燃焼室容積は均等に合わせる必要がある。そこで活栓付きビュレットて測定しながら燃焼室容積を規定値まで拡大するのだ。
僕は’85年型TZ250に乗りはじめたころから使っているが、どんな工ンジンを造るにも、この地道な作業は変わらない。バルプとプラグをセットした燃焼室に穴の開いたプラ板を置き、プラ板に空泡がなくなるまでオイルを満たすのだが、最後の一滴を落とすのに必要なのはレースて鍛えた右手の集中力だ(これは冗談)。
❹燃焼室を削るのは僕の仕事。レースのために圧縮を上げることはよくやるが、これを落とす作業ば滅多に行うことがないので、失敗しないよう緊張する。形状をまったく変えるわけではないので、それほど慎重にならなくてもいいが、圧縮比を10.4:1にするために削る量はほんのわずかだから、削りすぎには要注意だ。

丸山CBSOOFのエンジンを全バラして書部を調べてみると・・


1996年5月 誌面より抜粋
とても健康だった?900Fのエンジン


前号でお伝えしたとおり、いよいよ今回はCB900Fエンジンのオーパーホール(分解編)を行うことにした。
我がウイズミー・プロフェッショナル・レーシングでは、もちろんCB-Fエンジンのオーパーホールについても、750から900、1100Fまでの排気量をすべて行っており、仕様にしても、純正パーツで仕上げる完全スタンダードから、ドーバー・モンスターにも出場できるハイチューンまでいろいろとあるが、実は自分の900Fのエンジンを開けるのは今回初めてである。
エンジンをいじることを商売にしてしまうと、自分のマシーンを手がける機会はなかなか少ない。しかしノーメンテというのは実に恐ろしいもので、なんとかごまかしながら乗っていても、ある日突然動かなくなる可能性もある。そして僕の900Fは、まさにその前兆ともいうべきエンジン内部の異音、特にカムチェーンあたりからは絶対に何かが起こっていることが明らかにわかるほどの尋常でない音がしていた。そこで、思い切ってエンジンをパラすことにしたのだ。
約23000kmを走ったエンジンのヘッドカパーを外してみると、やはりというべきか、こんなにもというべきか、ものの見事にカムチェーンガイドがまっぷたっになっていた。これでよく最高速チャレンジを無事に走ったものだと思う半面、このトラブルが”ファイナルF計画”の起爆剤になったとは、なんともお恥ずかしい話である。続けてシリンダーヘッド、シリンダー、クランク、ミッションと外していったところ、このあたりは意外なほど状態がいいことがわかった。
詳しくは右ページの写莫を見てもらえばわかるが、開ける直前にパワーチェックを行ったせいか、パルプまわりやピストンヘッドのカーボンの蓄積は思ったより少なく、コンロッドやクランクメタルの当たりも悪くはなかった。折れたカムチェーンガイド以外は、いたって健康なエンジンであったのだ。もっとも、15年経過しているとはいえ、走行距離は23000km (中古で購入したため自分で走ったのは15000km程度) 。使い道はもっぱらチョイ乗りやツーリングだから、今回カムチェーンガイドが折れてしまったのが不思議なぐらいだ。もしこれがなければ、あと5万kmは充分元気よく走ってくれたはずだ。ただし、どれぐらいもつかは使い方によっても違い、ものによっては3万kmでクランクメタルのカジリや焼きつきが起きている。今まで手がけたなかには、そういうものもあった。
古くなったCB-F系エンジンのオーパーホール時期は、走行距離だけでは表せない。とにかくエンジンの音に耳を傾けてみたい。何かいつもと違う音が聞こえ始めたら要注意だ。そして肝心なのは、とどめを刺す前に手をつけること。ドッカーンといってしまってからチューンアップしようなんて考えていたら(僕もちよっぴり思っていた)、見積もりの段階で中古のCB-Fを探すほうがずっと安上がりなことに気づかされる。
今回は寸止めぎりぎりセーフといったところだ。

F系エンジンの傾向と対策
CB-Fのエンジンオーバーホールに必要とするパーツ代は、けっこうバカにならない。前述したように、僕の900Fのエンジンは、クランクメタルやパルプまわりなどは、現状ではまだ交換する必要のないほどだったが、組み立て後さらに10万kmは走らせようと思った
ら、ほとんどの消耗パーツは交換の対象になるはずだ。特に、エンジン内部に使用されている、ゴム、樹脂類
やペアリングといった摩擦摩耗系部品は、ほとんど交換してしまうことになるだろう。
ここで、”よく走るFのエンジン”を目指して、パーツ組み込み時に最も重点を置いて行っていきたい項目について挙げてみると、
① エンジンのメカ音を減少させたい
② 始動性を向上させたい
③ 加えてバッテリー上がりをなくしたい
④ ギア抜けをなくし、節度あるシフトタッチにしたい
⑤耐久性を向上させたい
というところになる。以上の5項目については、次号以降の組み立てのところで具体的な説明をするつもりだが、パワーアップ同様に力を入れていきたいと思っている。これから造ろうとしている僕のエフは、単に出力の向上だけではなく、日常の足として使いやすいエンジンにすることが目的なのだ。
まず、①の”エンジンのメカ音を減少させたい’’というのは、カムチェーンやクラッチなど、走らせているときはあまり気にならなくとも、停車中にアイドリングさせているとあまりにもうるさすぎる音についてだ。エフらしいといえばそれまでだが、このなにか壊れそうな音はもう少し抑えたいところだ。
続いて②の”始動性を向上させたい”は、エフではよくあるトラプルだ。僕の900Fの場合、1週間もエンジンをかけずにおいておくと必ずセル一発ではかからなくなってしまう。そのたびに何度もチョークを引いたり戻したり、キャブレターのガソリンを抜いてみたりと、出かける前の手間がかかりすぎる。
加えて③の”バッテリーが上がりやすい”ため、やがてセルが回らなくなり、押しがけをせざるを得ない。そうやっているうちに時間がなくなってしまい、フュ
ージョンに乗り換えたことも一度や二度ではなかった。あまりにも確実性がないので、大事な用のときは乗らないか、もしくは出かける前日の夜からパッテリーを
充電したりと、さらに‘儀式”は増える一方だった。何とも情けないエフ乗りだが、こんな思いをしているのは僕だけではないはずだ。したがって、いつでもどこでも気持ちよく乗れるように、始動不良の原因と思われるオイル下がりやキャブレターを見直し、ACGなどの充電系もしっかりと考えていきたい。
④の”ギア抜けおよびシフトのガタ”も始末に負えない。皆でソーリングに行った帰り、最後の集合場所で先にカッコよく立ち去ろうとして、ローギアで集合管の音が‘‘クォーッ’’と少し変わるまで回転を引っ張った次の瞬間‘ウワァーン”とギアが抜け、慌てて2速に入れ直し‘‘ガッチョン”とミッションが壊れそうなデカイ音をたて、さらに回転力守がりきってしまっ
たために‘ドルウウー”と、いいわけのしようのない恥ずかしい経験を何度もしてしまっている。そんなことから僕はエフに乗ると、いつしかおとなしく立ち去るようになってしまったのだが、やはり集合サウンドを奏でながらカッコよく立ち去ることを夢見て、ミッションとシフト関係をチェックするつもりだ。
最後の⑤‘耐久性向上’’だが、こいつはパワーアップとともに当然考えていかなくてはならないことだ。900の場合、より大パワーを発生する1100のエンジンパーツが使えそうなので、これを流用すれば大半が解決できそうだ。そうなると、排気量も1100に増やしてしまいたくなるものである。

1100化も目指す丸山CB
といったところで、エンジンの仕様について考えてみたい。極論すれば、パーツを移植することで750は900に、900も1100にすること可能なのだが、これはけっこう厄介である。オーバーホールをするときの消耗品に加え、本来なら使い回せるはずのシリンダーやクランクまでも交換しなければならないとなると、ほとんど総取り替えのようなものである。それなら1100のエンジンを買ってくればよいかというと、こいつもまた、エンジン代プラス、オーパーホール時の消耗品が必要になってくるので、さらに高くつく。
結論からいえば、750は850ccまで、900は1000ccまでのボア・アップでおとなしくしていればなんら問題はないのだが、やはりその上をいく排気量にできるパーツがしっかりとメーカーから出されているとなると、どうしても挑戦してみたくなるものだ。
そこて僕の900Fは、耐久性を考慮しつつ1100のパーツを移植、さらにポア・アップして排気量を拡大することに決定した。前号の隅のほうで「スペンサー派CBの威信をかけて…」と挑戦状を突きつけた編集部の佐々木さんも、このプランを聞いて「1100と810じゃなあ・・・」とすでに弱気になっていた。900Fの乗り味も捨てがたいが、この、一瞬にして相手の戦意を喪失させる排気量は、大きな武器なのだ。

ウイズミーパイプ製作の中間報告
さて、W.M.P.R.では現在CB-F用フルエグゾーストシステムの試作品というべきマスターエグゾーストを造っている最中である。この製品ではステンレスのエグゾーストパイプをオイルパンの両サイドで4-2に振り分け、エンジンの後端センターで2-1に集合させた後に右サイドヘパンク角を取りながら引っ張ってくるようにしている。サイレンサーはΦ100mmの細身の筒で、全長を約50cmと長めに取ることでパワーを落とさずに消音効果を得るつもりだ。次号では、エンジンの組み立てやエグゾーストシステム実走テストをお伝えできると思うので、問い合わせをしていただいた方々も含めて、もう少しお待ちください。(丸山浩)

丸ちゃん、大いにカスタムプランを語る


1996年4月 誌面より抜粋

これが最後だ、ファイナル・エフ計画ついに始めてしまった、エフのカスタム。前号でCB-Fの3台一気乗りをしたことで決意は固まった。
少し古い話になるが、僕がバイクの免許を取るきっかけとなったのは、高校生のときに学校の横に止めてあったCB-Fだった。それを見て、パイクに乗ってみたくなったのである。それでとりあえずは中型免許を取り、400ccクラスでパイクを探してみると、ちょうど工フに似ていたスーパーホークIII (SOHC3パルプの並列2気筒)があった。でも何力通りなと思っていたら、エンジンの迫力が欠けることに気がついた。エキパイが2本しかないのと4本出ているのでは、ずいぷんと違う。排気音を聞いてさらに僕は失望し、結局その当時4気筒最速といわれたXJ400を購入したのだった。その後はレースを始めてしまったものの、それでもいつかはデカいCBに乗りたいと思っていた。1988年、国際A級昇格を決めたこの年に、ついにCBを購入することにした。探したのはCB900F。高校生のときに見たCBには、確か900という数字が入っていたからだ。購入するときに750や1100の位置づけや意味なぜ900の値段がこんなに高いのかなどといろいろ考えながらも、900を買うことに迷いはなかった。翌89年、僕は川越にあるエンデュランスレ_シングに在籍。そこの浅海社長が実はけっこうなエフマニアだった。昔RCBの開発をしていたということで、エフにも使えるパーツをかなり隠し持っているのではないかという噂がチームの中にはあり、僕もいつかは社長宅のガレージを見せてもらおうと思っていた。全日本選手権の遠征に出かけるときは、いつも900Fでエンデュランスのファクトリーまで行き、4トントラック2台とワゴンに皆で乗り込み出発していたのだが、そのとき同じチームにいた岡田忠之(今はパリパリのホンダワークスライダーだ)に僕の900を見せると、「ウヒョー、丸さん、こんなに重たいのをよく乗ってられるね.!」なんて驚いていた。あれから7年、なんとか動いているエフを、そろそろ元気にしてやるかという気になってきた。何をいまさらのCB-Fカスタム、しかし僕はこいつにケリをつないと先に進めない気がするのだ。もうだれも手をつけそうにないし、今後エフの企画が出るとしたら、それはもうレストアの域だろうと勝手に判断。‘エフのレストア”なんて企画になってしまう前に、僕が最後のエフカスタム、究極のCB目指して‘‘ファイナルエフ計画”をやらせてもらおうではないか。思い込みの激しい、勝って気ままなエフのカスタムだけど、興味があれば1年ほどつきあっていただきたいと思います。

スペンサー・レプリカにはこだわらない
さて、いざ始めようとしても、どのように進めていくのかというコンセプトが決まらない。いろんな人に、どんなCB-Fがいいのか?を聞いてみると、意見がいろいろ分かれてさらにややこしくなる。正直いってこれを書いている間も頭を悩ませている部分だ。ただ、そのなかでも多くの主張があるのは、やはりスペンサーが活躍させたスーパーパイクレーサーを目標としたカスタムだ。編集部の佐々木さんがまさにそうで、CB-Fについて語っていると、彼が完璧なスペンサーCB派なのがわかる。ワンオフのメガホンマフラーからタンクの直筆サインまで、スペンサーの信者となりきっている。しかし、僕の場合はCB-Fをチョイ乗りやツーリングに使うつもりなので、レーサーっぼく仕上げるつもりはない。佐々木さんはあまりにもスペンサー仕様にこだわっているので、僕がそんなにこだわらなくてもいい理由を教えてあげた。スペンサー研業に抜かれたことを。そう、何を隠そう”丸山浩はフレディ・スペンサーを抜いたことがある”のだ。
それは1992年の鈴鹿8時間耐久口_ドレース決勝でのことだった。ミスター・ドーナッカラーのワークスRVF750に乗っていたスペンサーは、ル・マン式スタートを失敗して出遅れたが、1周目のバックストレッチで僕の前に出て130Rをクリア。妙に背中の立ったライディングフォームを見たとき、「おおっ、スペンサーだ!」と思わず心の中で叫んでしまった。よくピデオで見ていたスペンサーとケニーのパトルが走馬灯のように蘇り、「二度とないチャンス、こりや一度抜くっきゃない.!」と思い込み、シケインでのブレーキングをスペンサーがブレーキレバーをギュッと握りしめるまで我慢した。プレーキング状態のまま、スペンサーがシケインの入り口でRVFを右に傾け始めたとき、僕はリアタイヤをホッピングさせながら”ズパッ”とスペンサーのイン側に自分のマシーンを入れ込んだのだ。思わずスペンサーはびっくりして、傾けようとしてい
たRVFを起こしたとき、「勝った。!」と思った。こうして僕は、スペンサーを従えたまま、シケインを右へ左へと軽やかに切り返していったのだ。
その後、叢終コーナーの立ち上がりからホームストレートにかけて、再びスペンサーは僕を抜いていったが、それでも”俺は世界選手権の決勝でフレディ・スペンサーを抜いたぞっ。!’’ という事実に感動していたのだ。その前日、なんと佐々木さんは東京からCBのタンクを持ってきて、スペンサーにサインを入れてもらったそうなのだが、僕に抜かれるとは思ってなかっただろうな。まあ、なにはともあれ、転ばなくてよかった。1年間かけて用意してきた8耐の決勝で、1周目に転んだなんていったら、チームに何を言われることか。だから、本当は「あーっ転ばなくてよかった」と心臓をパクパクさせていたのだ。しかし、そんなリスクを負ってでも、一度でいいから‘‘あの”スペンサーを抜いてみたかった。ねっ、佐々木さん。
まあ、そうは言っている僕も、多かれ少なかれスペンサーにあこがれるのだが、いざCB-Fのこととなると、僕はスペンサーよりも漫画のバリバリ伝説の主人公、巨摩 郡の乗るCBのイメージが強かったのだ(だんだん話が違う方向に進んできた)。

コンセプトは”よく走るCB-F”
そう、できれば僕の考えとしてはレーサーのようにカリカリにチューニングするのではなく、どちらかといえば”バリ伝レプリカ”のように集合管プラスαで通勤カッ飛びスタイルを理想とする。もちろん実質的な走りもよくしなければならないので、足まわりを充実させる必要はある。プレーキシステムの向上やサスペンションの変更などを行い、タイヤもサイズの違うもの力選べるようにしたいと考えている。
だがよく考えてみると、エフのチューンアップはホンダ自身がさんざんやってきたともいえる。1979年に場した750/900のFZから始まり、フロントフォークはインナーチュープ径を拡大しながらエアアシスト機構やアンチノーズダイプを加え、リアスイングアームはFAでシャフト径を変更してピボットにペアリング
を装着した。ブレーキシステムもFBで片押し式の2ポットになっている。FCになると18インチのフロントホイールを採用し、カウル付きまで登場した。ついでに1100ccにボア・アップしてハイパワーエンジンを作成するなど、83年までの5年間をかけてカスタムされたようなものだ。ならば最終型のFDを手本に、それを上回る装備を考えていけばよいだろう。いうなればメーカーが83年に終わらせてしまったカスタムを引き継ぎ、‘‘よく走るエフ”を目指してグレードアップさせる。FDの次だからタイプ名はCB900FEとなりそうだが、今回の企画にのっとってEは飛ばしてF (Final)、CB900F-Finalとさせていただこう。

最重要項目のエグゾーストシステム
さて、何を始めるにあたっても、4サイクル並列4気筒をいじるのだから、真っ先にエグゾーストシステムをやらなくてはいけない。昔からCB-F用が気になっ
ていて、いろいろなものを物色したものだった。
僕がけっこうあこがれていたのが、RPM(レーシング・プロジェクト・ムラシマ)の製品だった。エキパイに対して細身のサイレンサー、そこから出る音色もよく、なんといっても4-2-1集合システムの2-1部を長めに取った構造が魅力的だった。もうひとつ気に入っているのが、バンス&ハインズのメガホンタイプ(ブラッククローム) 。スマートでシンプルな取り回し、メガホンのテーパー角度もよく、こころなしかショートなところ完璧なデザインだと思っている。
もちろん、今回は僕がウイズミー・オリジナルとして新たに作成するのだが、その取り回しには本当に迷
ってしまう。いつものように材質にはステンレスを使い、構造は4-2-1システム(テスト結果によるが)を考えているのだが、その他はまだ決まっていない。
まずサイレンサーの部分は、メガホンタイプがいいという声がものすごく多いのだが、現状のストリートレギュレーション(ようは音量規制)に合わせると、さすがに音を消し切れないのではないかと思っている。もちろんチョイ乗りに使うのだから、あまりうるさくてもまずい。CB1000スーパーフォアのときのように、消音バッフルを付属して音量規制をクリアするつもりだが、それでもサイレンサ一部分にそれなりの容量がないと、今の時代に合った音量とパワーは両立できないだろう。メガホン部で容量を稼こうとすると極太に
なってしまうし、取り付け角度も難しい。したがってサイレンサータイプを採用するつもりでいる。また、サイレンサー取り付け角度においては、これもCB1000SF用のようにセミアップタイプにしたいのだが、エフ系の長いステッププレートに合わせようとすると、これはまず不可能といっていいだろう。サイレンサーをセミアップにさせるためのバックステップ
も一応は考えてはいるのだが、コンセプトからしてSTDのステップ位置も捨てがたい。もちろんそれは前方に位置したUS仕様のそれではなく、日本や欧州用を指す。それにFCなどの後期型プレートや純正のジュラルミンステップの質感も捨てがたい。ちょっとラバーが厚すぎて踏ん張り感が得られないが、タンデムステップ用に使われているものの仕上げといい、エフにおいてはなぜ力労もしたいパーツのひとつなのだ。タンデムステップといえば、パックステップにしたらもちろんなくなってしまうだろう。特に乗せる女の子がいるわけでもないし、タンデムツーリングなどをするわけでもないが(そういえば野郎を乗せる機会というのはけっこうある)、もし万が一、何かあったときにタンデムステップがないのとあるのでは、人生が大きく変わってしまうかもしれない。
「俺はタンデムしない」と言い放ったバリ伝の主人公グンちゃんも、あくまでしかたなくとはいえ、アイちゃんという女の子を乗せてしまっている。これがきっ
かけでふたりは親密度を深めていったわけだが、もしこのときタンデムステップがなかったら…と思うと、「やっぱりタンデムステップは残しておこうかな」な
どと考えたりもしてしまうのだ。だいぶ話がずれてしまったが、とにかくエグゾーストシステムの製作に取りかかるつもりだ。4月中旬には試作を完成させてテストを行い、5月末には完成品を造る予定なので、少しでも期待している人は待っていてほしい。

750、900、1100、3台のFを眺めて
今回の企画では僕の所有するCB900Fがメインになるのだが、先月号でお伝えしたとおり各排気量ともにそれぞれの味があるので、この3台については並行してカスタムを考えていきたいと思っている。750や900では1100ccのパーツが流用できる部分が多いので、できればその流用性も詳しく調べたい。となれば、いちいちパーツを注文するのは大変だから、3台を並べて眺めまわしながら手をつけていくのが手っとり早い。そんなわけで、我がウィズミーのガレージに、750、900、1100、3台のCB-Fを揃えたうえで、パーツリストも各型式別に用意することにした(はっきりいってこれは大変だった。エフのパーツリストだけで、まるで本屋みたいになってしまったのだから) 。また、各車ともSTDの状態を知っておくために、モーターサイクル・ドクター須田の協力を得て、1台ずつエンジンの出力特性を測定しておいた。やはり、1100のパワーカーブは魅力的だ。某誌の最高速テストでは210km/hをマークしたとはいえ、心なしか僕の900がいちばんくたびれているようだが、まあ今に見ていなさい、絶好調以上の性能を取り戻してやるから。
そこで、エグゾーストシステムの製作を行っているうちに、次号ではさっそく900のエンジンをオーバーホールしてみようと思っている。実際に今まで行ってきたエフのエンジンは、意外に消耗していて交換する部品も多めだった。このへんも詳しく見ていきたいし、1100のエンジンパーツや社外品なども使用することで、耐久性の違いや排気量の変更なども調べたい。すでにデピューから15年ほどたってしまった僕のバイクだが、ここでリフレッシュして、この後さらに15年以上は元気よく走らせたいと思っている。(丸山浩)

CB750F/900F/1100Fの三台を走り比べる


1996年3月 バイカーズステーション誌面より抜粋
以降、記事より抜粋、加筆。あらためてCB1100FinalFの製作記録簿として、ここに情報を残します。


ホンダの並列4気筒のCBといえば、ライダーはこの人で決まりだ。レーシングCB1100SFを駆ってFゼロで大暴れし、愛車のCB900Fを選ぶ、丸山浩である自らのショップでも今年はCB-Fに力を入れるという彼の試乗記で特集が始まった。

3台イッキ乗り、なんていい企画なんだ
今回はCB-F3台の試乗ということで、久しぶりにガレージの奥にしまってある僕のCB900Fを引っ張り出した。編集部が用意した3台のなかにある900Fと自分のを乗り比べたかったからだ。
近ごろCB1100スーパーフォアやグレイトワン(自分のショップで造ったCBR900RR改。野中さんに試乗してもらい、ほめてもらった)にばかり乗っているので、久々に乗るフロント19インチがびっくりするほど、ステアリングの重さを感じさせてくる。最初の角を曲がるときなどは、ステアリングダンパーがガチガチにきいているのかなと思ったほどだ(もちろんステダンなどついていない。ハンドルだけがセミアップにしたスタンダードUS仕様だ)しかしどうだろう、ひとたびまっすぐ走らせてみると、その19インチの慣性が実に見事にステアリングを安定されてくれる。そして10分も走れば、ハンドリングにも慣れてきて、曲がるときの重ったるさも感じなくなってしまう。
エンジンのほうは、1000rpm、2000rpmとゆっくり回転を上げていくと、妙にそこばゆい振動が多い。今の並列4気筒エンジンのような、モーターの様に非常に定期的な細かい振動ではなく、もう少し揺さぶるような振動なのである。首都高に入ってからは、さらに上の4000rpmくらいで巡行される。すると今度はモーターどころか細かい振動まで消えて、実に快適に回ってくれるのである。
現在のオートバイか乗り換えれば。さすがに古さを隠せないものの、この安定感、そしてがさつなところがあるかと思えば、妙に調子がいいなと思わせることもあるエンジン。”やっぱりこれだよな!”といわせるだけの味わいがCB-Fにあるのだ、それが好きでずーとCB900Fを手放せなかったのだから、今回の750、900、1100を集めての”CB-Fイッキ乗り!”、こいつは待ってましたといわんばかりの、まるで僕のためにあつらえたような企画だ。

バランスのよいCB750F
まずはCB750Fナナエフに乗ってみる。タイプはFAだから最初期型のFZとほとんど同じ仕様なわけだが、これが拍子抜けするほどよく走るのである。
試乗前に、編集部でだいぶいじってくれていたというのが、それでも走り出して少しの間は、多少エンジンがくずついてた。だが、国道246号線から環八に入ってところで全開にしてみたら、調子をかなり取り戻した。たぶん、長い間乗らずに放置していたためのキャブレーターや点火系の不調だったのだろう。
東名に入ってからはすこぶるつきの絶好調。どのくらい走るかといえば、そう、今でいうなら”CB400SF並み”だ。なんていうとあんまり聞こえはよくないが、でもCB400SFって、180km/hに達成させるのなんてアッという間だ。それを考えれば、16年前当時のナナエフっていうのはものすごく速かったんだろうと想像できる(それにしてもこの物々しい速度警告灯、まるでメーターからのハイビームを受けているように明るいじゃないか、これはなんとかならんかな…)
このナナエフは峠に入ってからも実によく走ってくれた。フロント19インチを履いているくせに、軽快いワインディングロードをかけ上がってくれる。40~50km/hで流して走るようなコーナーの連続では、思ってたいうよりも遥かにステアリングレスポンスがよい。これは編集部が装着したミュシュランのマカダム50によることだと思う。CB750Fには昔散々のったという編集長によると、新車のときよりコーナリングがいいほどだという。とはいえ、調子に乗って侵入スピードを上げていくと、コーナーにはいってからいくらバンク角を増しても今のバイクようには曲がらないことに気付かされる。”ここで向きを変えたい!”と思った頃で、グルリと旋回させることができないのだ。ただただ大きな円を書くことを計算に入れてコーナーに侵入するのがいい。そうやって自分は思いどうりのラインをトレースしていくときの快感は、今のオートバイとなんら変わらないのだ。
もうひとつ、コーナリングで大きなハンディとなるのはサスペンション、特にショックユニットだ。今のオートバイでもだめな奴らはだめだが、この時代のものは、本当にだめだ、設計、製造技術が古いということと、使いまわしたというダブルパンチをくらっているから、コーナーリング中に路面おうねりを拾をうものなら、リアがたわみはじめてどうにもそのままでは収まらない。しかたなく、車体を起こすか、アクセルを戻してやるということになってしまう。CB-Fシリーズには、当時として斬新のFVQダンパーが装着されているので、こいつの減衰力調整を1から2のほうに切り替えてやる。たったこれだけでグッとよくなった。たくさんノッチがあっても全然使いやすくない現在のダンピング調整システムよりも、わかりやすくていい。
そんなわけで、最初の台のナナエフは、ブレーキがもう少し利けばいいのにと思った以外は、乗る前に考えてたよりずっとよく走った。

排気量の違いだけでは表せないCB900F
次にまたがるのは、僕の愛車と同じUS使用の900F。こいつの走りはCB-Fシリーズの中でもいずtに特徴的だ。その最も大きな要素となっているのがエンジン特性だ。CB-Fの900ccは、750ccよりボアが2.5mm、ストローク7mm大きいロングストローク型だ、1100ccの場合はさらにそこからボアを5.5mm拡大しているので、ボアストロークの比率としては750が62×62mm(748cc)で1.000、900は64.5×64.5mm(901.8cc)の1070、1100の70×96mm(1062.2cc)になって初めてショートストロークの0.986となる。だから750Fと1100Fはバランス的に近く、900Fのみが唯一ロングストロークエンジンの吹け上がりをするわけだ。
もちろん絶対的なパワーはナナエフに勝る。だがアクセルをひねった瞬間にピストンの反応とでもいうのだろうか、ナナエフよりもストロークが大きいためか、エンジンのやる気とでもいうものが、ほんのわずか、100分に何秒くらいずつ、ずれて現る感じなのだ。究極的にアクセルワークをするよりも、勝手にエンジンが作り出すトルクフィールドを楽しみたい吹け上がりとでも言ったらいいのだろうか。
僕としてはその100分の何秒差におってナナエフよりスポーティーさに欠ける900Fを、どちらかといえばツーリング向きのエンジンだと思うのだ。ただ”オートバイを走らせる”という仕事に対しては、やはりナナハンよりも900Fのほうが排気量による力強さを感じさせてくれることは確かだ。
足回りに関しても、今回の900Fはよくなかった。フロントタイヤはサイドまでしっかりと使い切ってしまっているダンロップのTT100。リアにはほとんど角減り気味のミシュランM48という組み合わせで、これはいかんともしがたい。ただ、900F本来の性能を出し切ったとしても、ナナエフよりはスポーティーさに欠け、更にいえば、どっしりとした安定感を楽しめるのが900Fならではのハンドリングなのだ(数日後、僕は900Fにもマカダム50を装着させて試乗してみたが、この結論は変わらなかった。)

熟成された”エフ”の頂点CB1100F
さて次にまたがるのは1100F。一度走り出せば、これはもうCB-Fシリーズの頂点とうべきマシーンであることがだれにでも体感できる。
エンジンはアクセルに瞬時に反応してくれる(と書いてもあまりおおげさではない)レスポンスのよさを持ち、なおかつ900Fを上げるトルク感と、パワーを兼ね備えている。いかにもリッターオーバーの底力を味わわせてくれるのだ。もちろん今のZZ-Rや1100Rのように”300km/hに調達するか?”などということはないが、峠のコーナーとコーナーの間の短い直線では、半分も行かないうちにアクセルを閉じたくなるような暴力的パワーを備えてる。それでいうエンジンの中でたくさんのパーツがしっかりと動いてるような、味がある回り方をし。その魅力は申し分ない。
さらに、コーナリング能力もナナエフや900Fから一新、CB-Fとしての走りが1100Fでしっかり熟成されたことがわかる。もちろんナナエフには前後タイヤが18インチ化された国内仕様のFCタイプがあるので、こいつも悔れない。が、しかし1100Fはさらにリアホーリを17インチ化。ナナエフ、900Fにあった大きな円旋回を、フロント19インチのまったりとした安定感を残しずつ、旋回スピードをさらに上げていくような走り、深いバンク書くで一気に向きを変えられるようなコーナリングの特性へと進化されている。
これはもう立派なコーナリングマシンだ。形からすれば、今ではネイキッドと呼ばれてしまうが、当時ではレーサーレプリカに匹敵するほどの性能と排気量が与えられた世界最高峰のマシーンだったのだ。もちろん、今のネイキッドバイクと峠で勝負しても勝てはしないが、方向性のはっきりしない中途半端なネイキッドより、かつての最高技術を注ぎ込まれたコーナリングの楽しさのほうが上だ。それを充分に満喫させてくれるマシーンとして、1100Fは魅力たっぷりなどだ。

比べてみれば”やっぱり俺のが一番”
さて今回3台を一気に試乗して、どのCB-Fも排気量だけの差ではなく、それなりに持ち味があることがはっきりした。そうなると、できれば3台とも欲しくなってしまうというのがCB-Fファンの本音なのだが、どれかに1台に絞らなくてはならないというのが普通だろう。僕も同じで、だから900Fを取ってあげるのだが、今回に試乗の結果だけでいえば、自分が持っている900Fがいちばんどうしようもないなと思えてしまう。
個人的な見解を書かせてもらうと、ナナエフにはエンジンと車体造りのバランスのよさ、また手軽に乗れ親しみが感じられる。また、中古車としてのタマ数も多く、価格の面でとても入手しやすい。されに国内仕様のナナエフは、装備の点でも気合の入れようには他の仕様を圧倒しているという魅力がある。FBタイプですでにジュラルミンステップだし、FCタイプとなれば排気量の違いを野添て、ほぼ1100Fと同等の所有感を味わうことができる。これは個人的にカラーリングのいちばん気に入ってるエフでもあり
1100Fに関しても、もちろん手に入ればいうことなし。今でも充分な1100ccパワーはものすごい魅力だし、ゴールドコムスターやアルミに見せかけた角パイプリアアームなど足回りも充実、ハイレベルな装備が満載なのだ。また、ゴールドコムスターと1100Fカラーは、赤でも青でもバッチリ決まるされに好き嫌いを言えば、US仕様のビキニカウル付き1100Fのキャストホールは論外である(US仕様を大事にしている1100オーナーの人にはごめんさい)。
そして問題の900F。スペンサーイメージが強いだけに流行り人気は高い。しかし全体的に重ったる感じがするし、もちろんハンドリングも同じナナエフの19インチに比べればずっと思いフィーリングだ。またエンジンに関しても、900Fのみが他の700F、1100Fとは違い、そのスポーティーな車体のイメージは反するような出力特性を持つ。されにUS仕様となれば、こんなライディングポジションだれが作ったのか”アメリカ人はハーレーばっかり乗ってるからこんなになっちまうのか!”と思わせる、とにかくUS仕様のハンドルは、スタンダードのまま乗っている奴らに出会ったことがないというほど変だと思ってる。僕の900Fも元はアップハンドルだったが、他のスタンダードなものの、ここだけは交換した。案の定、今回の試乗車の900Fもハンドルはセミアップに変更されてた
しかし、出来の悪い奴ほどかわいいと思えてくるのは本当で、鈍感であるがゆえに900Fにしかできないことだってあると考えようとなるのだ。何気なふだんの足として、そしてツーリングなどで、長い時間乗り込んだときの900Fエンジンのトルクフィールの穏やかさ。また、ちょっとやそっとのギャップを踏みづけたくらいではその直進方向を変えそうにないどっしりと安定感のあるハンドリングが、実に優しく疲れ知らずのである。そういった意味で、絶対に他のエフでは表現できない走りをもっている900Fは、価値ある存在として認めざるを得ない。というわけで”やっぱり俺の900Fがサイコウ!”なのだ

はまってしまうCB-Fのカスタム
さて僕が乗る900Fの価値を上げておいたところで、さらに個人的な話に移ろう。”CB-Fのカスタムについて”だ。僕の900Fは、購入するとき一緒にUSヨシムラも注文、その後、先に書いたように、さすがに我慢できずにハンドル変更、その回数なんと3回。しかしどれもしっくりとはいかなかった。1100Fのステップまわりを移植することまで考えたのだが、ちょっと加工が必要だったので断念。この際スタンダードのままで乗っていようかとうことで、USヨシムラも売って、ここも純正に戻った。そして現在に至るわけだ。さて3年ほど前からCB1100SFのカスタムに励んでるが、近ごろはレーサー仕様になりっ放ししなので、再び900Fが足代わりになることが多いい。そんなわけで引っ借り出して暖気していると、このスタンダードの”ドヒュドヒュ”という排気音がたまらなく心地よいが、しょっちゅう乗っていると、やっぱり気になるのがステップの位置。やはりステップを変えようかと考えているうちに、もうひとつ弱点であるブレーキも?と考え始めたら止まらなくなってきた。
ちょっと前に、自分のショップでナナエフのFCにブレンボ4ポットキャリパー用のサポートを作って取り付けたことがある。当然自分のぶんと考えてもうワンセット造っておいたのが、なんとブーメランコムスターについても、裏コムにはフロントフォークとの隙間が取れなくて、対抗ピストンキャリパーを押し込むことができないのだ。となるとはやりホイールを替えなければどうしようもないのか…となる。するとフロントフォークも一緒に、さらにフロントホイールとともにリアを替えるならば、もちろんスイングアームもついでに替えたんくなる。こうして、”ブレーキが効かない”という素朴な欠点から、CB-Fのカスタムプランは大カスタムへと発展しまうのだ。
やるんだったら徹底的にやるべきか?はたまスタンダードパーツを多用して、なるべく元のイメージを残しながらだとするか?結局はスタンダードのままで乗ろうか…など、もう頭の中は超パニック。
しかし、今やらなきゃ、また当分の間手をつけそうにない。ということで決意した。ウィズ・ミーはCB-F3台のカスタムに着手する。今回の”CB-F3台イッキ乗り企画”はエフのいろいろな顔、エフにしかない魅力、何を残して、何を入れ替えればいいのか、ということを考えるいい参考にもなった。何をいまさらのCB-Fカスタムだが、まずは、エグゾーストシステムからだ。楽しみに待っていてほしい。







HONDA CB900F WITH ME 1100Final F
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前後ホールにCB1000SFの18インチ純正ホイールを採用、フロントフェンダーも同様、全体的にはホンダ純正スタンダードなフォルムを保持している

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今回、マフラーは当時のCB900F北米仕様純正のマフラーに変更されています。
リヤエンドの排気口は750より、かなり大きくなっています。

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あえて、当時の北米仕様のウインカーステーを生かし、横幅広く設定されています。

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ファイナルエフではSTDのイメージを崩さないよう、少しおとなしめでいくことにした。とはいっても、そこはYFデザインの深沢さんによるカスタムペイント。一見したところでは900Fと同じデザインだか、ステッカーなどは一切使用しないでラインと文字にグラデーションを多用しているので、近くで見るとSTDの塗装よりも格段に質感が向上している

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メーターは1100F用に変更。スイッチ類もCB-Fの純正を採用している、できれば他の場所に移したほうが使いやすい。ウィンカーはCB-Fの顔とも言えるパーツ。ハンドルバーはCB1000SF純正

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以前はオリジナルエキゾーストシステムが採用されてたが、現在はCB900F純正となっている。

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こだわりのスタンダードキャブレターセッティング。セッティングの方法は、別途下記に記しています。

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フロントプレーキキャリパーには、効力+コントロールフィーリングともに気に入っているブレンボ4ポットを使用。
キャリパーステーは、WITH MEオリジナル。現在は廃盤となっている。

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以前はオーリンズ製のフルアジャスタブルツインが採用されていたが、現在はあえて純正のサスペンションが入っている。
ダンピングはまだ効いているが、改めてよいコンディションのFVQダンパーを探している。

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ステップは、純正ヨーロッパ仕様が、ポジション形ともに最も気に入ってるためUS仕様から変更